春、待ちぼうけ | ナノ


  なぜならば


セオドールくんは確かに13才14才15才辺りでは大人っぽい方だと思う。私がその辺の年頃のとき、あんなに大人っぽい雰囲気ではなかったはず。けど、だからといって、私が子供っぽいとか年上に見えないとか、そういうことはないと思う!

「ならいったいなにがいけないのかな」

「さあ」

「さあって! セオドールくんが年上扱いしてくれないから考えてるのに!」

私の(自覚してしまうレベルで)子供っぽい訴えにもセオドールくんは優しいお兄さんのような、慈愛に溢れるような瞳を向けて微笑んだ。わー、綺麗な笑顔……かっこいいっていうよりも美少年だよねー。好き!!!

「……は! ちがう、これもいけないの!」

「ベル?」

「年上かと錯覚するくらい大人っぽいセオドールくんが隣にいるだけで余計に子供っぽくなる気がするの」

「(僕関係なくないか)」

小声でなにかセオドールくんが言った気がしなくもないけど、そんなことも気にせず高らかに宣言する!

「というわけで、しばらくセオドールくんに会いに来ません!」

「ああ、うん……?」

宣言してそのままセオドールくんに背を向けて走り去る。ホグワーツ司書のマダムに鬼のような形相で「走らない!」と怒鳴られたので慌てて小走りに変えて図書館から出ていく。
……まるでセオドールくんが悪いかのように出てきたけど、セオドールくんが悪くないというのはもちろん分かってる。悪くないけど……アダルトベルさんになるまでセオドールくんの隣にはいけない! 大人っぽいセオドールくんの隣にいたらちんちくりんに見えるかもしれないし。それはちょっとイヤなので。

とは言ったものの。ホグワーツで私が主に出入りしてるのって大広間と図書館くらいだ。図書館も最近ようやく壁に手をついていればたどり着くようになったレベルの方向音痴の私がセオドールくんやボーバトンの友人たちなしにどこにどうやって行けばいいのか。えっまじで。助けてフランスのお父さん、お母さん! 私はどこにどういけばアダルトベルさんになれるの!

「(というかなにより、セオドールくんに会いたい)」

大真面目にセオドールくんに会いたい。図書館から出てきてまだ五分もたってないけど、でもセオドールくんに会いたいいい……!! セオドールくんに会って、本を読む彼を眺めながら本を読みたい……あれ、これが禁断症状? もしかしてセオドールくんは私限定の麻薬かなにか?

「ねえ」

「はい?」

呼ばれた方を振り向けば、そこには輝く白い歯が眩しい、黒人のイケメン少年がにこやかに微笑んでいた。……あれ、この子セオドールくんと同じ緑色のネクタイ?

「えっとなにか用?」

「いやちょっと気になって。あんたノットの友達だって言う、ボーバトンのおねーさんだろ?」

「おね!!?」

おねえさん!?

下に妹がいるから姉属性ではあるものの、セオドールくんに会ってから年上というかおねーさん扱いされず、アダルトベルさんになろうとしていた私がおねーさんですって!? なんていい子なのだろうこの子。あとセオドールくんの友達っぽいしやっぱいい子なんだろうね!

「ふふ、ベル・マカリスターだよ」

「そっか。じゃあベルおねーさんだな。俺はブレーズ・ザビニ。よろしく!」

ウィンク飛ばしてくれた。なんて様になる年下可愛いイケメン! 好きになっちゃう!!
キラキラキラキラ輝くイケメンスマイルで微笑んでくれる、幼さを残したイケメンザビニくん。うん、やっぱりかっこいい。イギリスっ子は美形が多いのかな?

「んで? おねーさん何やってるの」

「えーっと。実はかくかくしかじかで……」

「待って、かくかくしかじかってなに」

「なんと!」

伝わらないのか! マンガや小説ではこれで通じるというのに。くそう、あれはデマだったのね……!!

「ええっと、実は……セオドールくんに子供扱い(?)されてる気がして」

「ノットに?」

「うん、まあ……」

あの子供を見るような慈愛に溢れた瞳を私は一生忘れない。

「まあそれがイヤで、これから大人っぽくなるまでセオドールくんに近づかないようにしようかと」

「どうしてそうなった」

呆れられてしまった。
でも仕方ないのだ。セオドールくんの隣に一緒にいたいわけで、でもセオドールくんも隣に子供っぽい子がいたら恥ずかしいかもしれない。だって彼は大人っぽいから。

「だからまあ大人っぽくしないといけないっていうか」

ザビニくんに思っていることを全部伝えると、彼は訝しげに「なんで?」と聞いてくる。

「なんで、とは」

「ノットに恥ずかしい思いをさせず、自分を変えたいと思うくらいまでなんで一緒にいたいの? おねーさん」

「……なんでかなあ」

そういえばなんでだろうな。セオドールくんと一緒にいたいのは。セオドールくんに会いたくなってるのは。
わざわざ外国まできて、その国の人とばかりいるのは。きっと。

「きっとセオドールくんのことが好きだからだね」

恋愛的な意味で!

2017/05/30

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