ビックリだよ
「じゃあベルの両親はホグワーツ出身なのか」
「そうそう。で、仕事で行ったフランスで私が生まれて永住ってこと」
目の前にあった図書館。そこで、先程の彼・セオドールくん話が盛り上がってしまい、今に至る。
何となくの流れでお互いのこととか家族のことを話し始めた。そこで分かったのは、セオドールくんがセオドール・ノットという名前だということ、彼が15歳になったばかりだということ、スリザリンという寮の生徒だということだ。
父に「スリザリンはやばいからな!」と言われていたけどセオドールくんは無表情なだけで、とても優しいし図書館の中でも迷子になりかけていた私にいろんなジャンルの本棚へと案内してくれる…良い子じゃないか!
「セオドールくんの両親は?」
「同世代の親よりかなり高齢」
「君に年の離れた兄弟とかは?」
「いない」
ということはセオドールくんは長男か。
高齢になっての第一子って甘やかされてわがままっていう私の勝手な偏見があるんだけど、セオドールくんを見る限り落ち着いてるしそんなことは全くないんだろうなぁ。まぁ私のイメージだけどね。
その後も(図書館なので)お互いのことを言ったり聞いたりしていた。
私は両親のことや、やけに女性にモテるイケメンな妹がいること。
セオドールくんにはかなり金持ちの坊ちゃんが幼馴染でいて、彼の重りは大変だということや、さらにその坊ちゃんが顎でしたがえる二人は食べ物を食べすぎるから食事のときは絶対に隣に座りたくないということなどだ。私はともかく、セオドールくんは友人たちの話ばかりだ。
「仲良いのね」
「どうだろうな。親同士の付き合いというものもあるし」
「ノット!!」
いつの間にか近くにいた少年がセオドールくんに声をかける。いかにもお坊っちゃま〜という感じだ。
私をチラと見てもスルーした彼はセオドールくんの肩を掴む。
「魔法薬学の教室にいないと思ったけどここにいたのか。スネイプ先生が心配していらっしゃったぞ」
「あぁ、さっきまで寝ていた」
「またか…」
やれやれと肩をすくめる少年。
そんな彼にセオドールくんは淡々と返事を返すだけだった。
「ベル、これがドラコだ」
「『これ』扱いか!!」
「金持ちお坊っちゃまか」
やっぱりお坊っちゃんだったんだ。
私より小さいから、ちびっこ的なイメージはあるんだけど。
「Il ressemble a Chihuahua…」
「?」
「ノット、次の授業は出ないのか?」
わー、完璧なスルー。
「魔法史は出なくても変わらない」
「分かった。じゃあ授業後に大広間で」
「ああ」
半ば面倒そうセオドールくんの返事。出会って数分しかたってない私でもわかるんだから、幼馴染みの彼にも分かったはず。チワワみたいな癖に。
けれど、金持ちお坊っちゃまは気にしないように立ち去った。…あ、セオドールくんはいつもこうってことかな?
立ち去る幼馴染みを暫し見つめてから、セオドールくんは本棚の本を数冊手に取る。
「童話?」
「そう」
…ごめん、少し意外だった。
こう、私が理解できなさそうな論文とか読みそうなイメージで。
「なんていう童話?」
「『青髭』」
「…………………Blue、…え?」
「知っているのか?」
「ま、まぁフランスじゃ魔法使い、マグル関係なく知ってるんじゃないかしら?」
慌てて口に手を押さえる。…危ない危ない、今空気を吸ったら思いっきりリバースするとこだった。
…セオドールくんが童話読むのも意外だけど、作品にもビックリだよ。
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