春、待ちぼうけ | ナノ


  ネコ科の少年


イギリス人の父に「ホグワーツでかいぞー」とは言われていたし、油断をしていたわけでもない。…けど、けど!

「どこよ、此処!!」

絶賛迷子中である。
…図書館が見たいと思ってホグワーツを歩いていただけなのになんでこんなことになってしまったのだろうか。あぁ、ボーバトンの宮殿が懐かしい。ついでに一年生の時、ボーバトンで迷子になったのも懐かしい。

城の廊下を行ったり来たりし、さっきも通ったと思われる場所を周ったりしているのに図書館に近付けている気がしない。ホグワーツはただ今授業中らしく、生徒や教師があらわれる気配もないので誰にも聞けないでいた。
だからと言って、それぞれ茶会を開いたり、趣味にふける絵画たちに聞くのは申し訳ない。

「…こんなことなら地図でも書いてもらうんだったわ」

友人たちは各々好きなところへ行っている。自由に過ごせる時間に図書館に行きたい人なんて私以外いないらしく、現在ボッチ。うわー、心細い。

そんなことを考えていれば、今まで通ったことのない廊下に出たことに気付く。なぜなら廊下にあるベンチで堂々と寝ているサボり生徒が居たからだ。ホグワーツの制服着てるから、此処の生徒なんだろうけど…授業中なのに。
…しかしこの子―男子生徒だけど、雪のように白い肌を含め、全体的に色素が薄い。しかも女の私がうらやむような美形さんだ……うわ、まつ毛長い。フランス人形みたい。

「もしもーし?」

一応声ををかけてみるも無反応。でも先生とか来てサボりがばれたら困るわよね?

「おーい、起きた方が良いわよ」

今度は少し揺すってみる…も、やはり無反応だ。どれだけ深い眠りについているのかしらこの子…。それとも綿sの発音が良くなくて子守唄の一環にされていたりとかする?一応家では英語なんだけどな。まぁ一年の大半はフランス語だけど。

…はた、と思ったのだけれど、この子死んでないわよね?き、規則正しい睡眠が聞こえてるから平気よね!?
いやでも、仮にこの子が苦しくて死にかけている状態なのに私がスルーしたりしてホントに死んでしまったら、私は第一発見者となり、下手すればイギリスの牢獄行きに…!?

「起きて!死なないで!私牢獄に入れられたくないのよ!!」

もはや涙目でがくがくと大きく方お揺する。
牢獄に入れられてたまるか!私にはフランスに在る超でっかいフランスパンを30分で食べきるという夢があるんだから…!

「…るさ」

「あ、お、起きた…?」

「うるさ」

死なないで起きてくれたホグワーツ生。かなり眠いのか、細く開かれた目を何度も何度も擦り、伸び、そしてあくびをする。…ネコ?

「良かった、死んでないでくれて」

「? 俺の知ってる人?」

「いや、それは違います」

起きたと思ったら話が全くかみ合わない。言葉のキャッチボールしようよ。

「ボーバトンの制服…のイギリス人?」

「うわ、グサッと来た」

例えるなら、でっかい矢印が頭と胸に刺さった感覚。
え、まさかのイギリス人…いや、見えるだろうけど、容姿はそう見えるだろうけど。

「両親がイギリス人、私はフランス国籍」

「…それで発音が良いのか」

お、おお?
発音って英語の発音?あ、英語の発音でイギリス人って判断されたのか。発音のことは、褒められたことがないから嬉しいわね!

「ありがと」

本場の、彼のような発音とはやっぱりほど遠いとは思うのだけれど、それでもなんか嬉しいわ。まぁ 私が基本的に褒められるの好きなんですけどね。

…あぁ、そうだ。ついでだから聞いてみようかな。

「ホグワーツの図書館ってどこにあるのかしら」

そう聞いてみれば、今までずっと眠そうな無表情だった彼が小さく笑った。

「目の前」


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