レアバードで北の方角、おそらくメルトキオ方面へ向かったと思われるロイドの追跡はジーニアスとリフィルに任せ、エミルとマルタ、リーガル、クライサはこのままセンチュリオン・コアを追うことにした。
ジーニアスたちと別れ、街に戻ったクライサたちはコアを持っていったというアクセサリー屋を訪ねる。四人が店に入ると、眼鏡をかけた老人がひとりで店番をしていた。
「すみません。こちらのご主人が、不思議な宝石を持って帰ったと聞いてきたんですが……」
「ああ……あれなら買い手がつかなかったとかで、せがれが元あった場所へ戻しに行ったよ」
「あ〜、入れ違いになっちゃったんだ」
「すぐ追いかけよう!」
エミルとマルタはすぐに踵を返して店を出て行く。しかしリーガルとクライサは違った。
「……失礼、以前の店主の方は?」
「……はて?何か勘違いをなさっていませんかの」
「おじいさん、このお店って長いの?」
釈然としない表情のリーガルの隣で、クライサが無邪気に問う。老人はもうずっとここで商売をしていると言った。
「そうなんだ。……あ、リーガル、マルタが呼んでるよ。早く行こう」
「……ああ、そうだな」
「じゃ、ありがとね、おじいさん。また今度アクセサリー見に来るから」
「ああ、またおいで」
リーガルの手を引きながら店を出、エミルたちの後を追う。その間何も口にしなかったが、クライサは確信していた。
氷の神殿まで戻り、リフィルたちに再会したあたりまで歩くと大きな氷の塊を見上げた。先ほどリフィルがセルシウスの涙と言っていたことを思い出し、これがそうなのかと改めて驚く。
セルシウスの涙は、周囲のものを凍らせる力がある珍しい氷の花だ。なのに今目の前にあるのはどう見ても巨大な氷の樹。両手でも包めるくらいの大きさだった筈のものが、ここまで異常発達してしまうとは。センチュリオン・コアの暴走って本当に面倒くさい。
「ここにはグラキエスのコアがある筈ですよね」
テネブラエの問いに、マルタが頷く。アクセサリー屋が戻しているなら、氷のセンチュリオン・コアがここにある筈だ。
「……私の感覚が狂ってきたのでしょうか。何故かソルムのコアがあるような…」
「ソルムって、地のセンチュリオンでしょ?おかしくない?ここ、氷の神殿だよ」
「……そうですね。気のせいかもしれません」
マルタに向かって頷き、しかしまた首を捻る。テネブラエの様子を見ていたクライサは、顎に手を当てて短く思案し、それからリーガルに囁いた。
何かあるよ