それぞれ街の人たちを助け、四人全員が再会した時には火事はすっかりおさまっていた。とりあえず自分たちに出来ることはやったのだからとセンチュリオン・コアを取りに行くことにして、目指したのはかつてセルシウスがいた氷の神殿。
一面雪と氷に覆われていた筈の地面は、大半を緑の草が覆いつくしている。フラノールの街も随分暖かかったし、雪の降るトリエットといい、やはり最近の異常気象はかなり問題になっているようだ。

神殿の入り口で巨大な氷を前にしていたリフィルとジーニアスに再会し、街にいなかった彼らにロイドによる襲撃(クライサは否定しているが)の話をすると、リフィルは首を傾げた。

「……おかしいわね。フラノールは別に反マーテル教の街ではないわ」

それにはクライサも頷いた。ロイドが襲ったという街は、反マーテル教だったり、その疑いがあるからという理由だった。そうなると、ロイドがフラノールを襲う理由が見つからない。

「だからロイドじゃない誰かが、何らかの目的を持って襲ったんだよ」

「誰が?」

「誰かが。それを含めて探るために、あたしはアンタたちと旅してんだよ」

ジーニアスとリフィルは何故ここにいるのだとリーガルが問う。するとジーニアスは慌て出し、大変なんだ、と状況の説明を始めた。二人はセンチュリオン・コアを見に来たのだが、コアはフラノールのアクセサリー屋の主人が持って行ってしまったらしいのだ。

「返して欲しいと言ったんだけど、そんな貴重な品なら転売出来るから駄目だって……」

「……まずいですね。危険です」

テネブラエの言葉にエミルが頷いた。危険だという意味がわからずクライサが首を傾げると、マルタが、アスカードでコレットがコアに触った時のことを教えてくれた。
ラタトスク・コアの恩恵を受けるマルタは平気なのだが、普通の人がセンチュリオン・コアを持っていると心が壊れてしまうのだという。テネブラエが補足するには、性質が凶暴かつ残忍になり、大抵は破壊衝動に突き動かされて暴れたりするとか。

「それが本当なら、ロイドのフラノール襲撃に説明がつくのではないか?」

「ロイドがセンチュリオン・コアの影響で暴走している……?」

リーガルの言葉を受け、リフィルはその可能性について考えを巡らせる。エミルやマルタもその可能性があると頷くが、クライサは納得がいかない様子だ。

(確かに暴走の理由にはなるかもしれないけど、アイツがセンチュリオン・コアを集める目的に説明がつかない)

彼は父との約束でエクスフィアを回収している筈だ。それを中断してまでコアを集めるのは一体何故なのか。フラノールを襲ったのは誰なのか。パルマコスタやルインの襲撃は本当にロイドの指示なのか。
考え込むクライサは、微かに痛んだ頭に一瞬眉を寄せ、小さく舌打ちした。





……まったく、面倒なことだらけだ




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