カンベルト洞窟から戻ったエミルの手には、ローズマリーがしっかりと握られていた。だが異常気象で枯れてしまったというのも嘘ではなかったようで、それは奇跡的とも言えるような発見だったらしい。
何にせよ、これで魔物の毒は治せるのだ。リーガルを解放してやるためにも、ベルクには目を覚ましてもらわねばならない。
「クライサの用事は終わったの?」
ローズマリーのおかげで目を覚ましたベルクは、リフィルらから話を聞くとすぐさま牢へと向かった。これですぐにリーガルは解放されるだろう。安堵してその姿が見えるのを待っていると、ジーニアスが問いかけてきた。
「まぁね。元々たいした用じゃなかったんだけど」
「え、でもエミルたちから離れるぐらいの用事だったんでしょ?何してたの?」
「んー?宣戦布告ってとこかな」
「……へ?」
着替えを済ませたリーガルと合流し、フラノールへ向かうべく船着き場を訪れた一行だったが、何か言いたげなエミルの様子に足を止めた。
どうやら彼はこの村がまだ心配なようだ。火事の原因はわかったが、ヒッカリカエルをなんとかしたわけではない。ロイドを追っている間に、また火事が起きるかもしれない。エミルの言いたいことはわかるのだが、こちらにも目的がある。
「では、こうしないか?」
提案したのはリーガルだ。自分はエミルたちについてここに残るから、リフィルとジーニアスは先にフラノールへ向かってくれと。その提案に皆が首を縦に振り、クライサもジーニアスたちを見送る形となった。
「んじゃ、とりあえずヒッカリカエルが現れる原因を探ってみようか」
火事が起こった場所を回って被害状況を調べてみると、どうやら原因はこの村で生産されているカマボコグミにあるようだった。被害にあった場所のどれにもカマボコグミが置いてあったらしいからとエミルが言うが、テネブラエは否定する。魔物がグミに惹かれるなど。
断固として認めようとしないテネブラエに、エミルのラタトスクモードが発動した。ヒッカリカエルは光属性の魔物だ。闇のセンチュリオンであるテネブラエに何がわかるのだ、と声を荒げる。
「まーまー、落ち着いてよ」
「クライサ……」
「言い争うことなんかない。本当にグミが原因かどうか、実験してみればいいんだよ」
「そうだな、クライサの言う通りだ。違っていれば、別の原因を探せばいい話なのだから」
「……そうですね」
双方の了解も得たことだしと、クライサがカマボコグミを求めて訪ねたのはベルクだ。事情を説明すれば、彼はテネブラエと同じように首を捻りながらもグミを分けてくれた。
さて、実験開始だ。巻き込むものの無い浜辺で、カゴに入った大量のグミを前に立つ。暫し待っていると、やはりと言うかヒッカリカエルが本当に現れ、テネブラエを驚かせた。
マジでグミかい!