「確か、ヒッカリカエルはフラノール地方にしか生息しない特殊な生物だよね」
「ノストロビアです!」
「ここにはフラノールとの定期便もあるわ。積荷に紛れて上陸した後、この異常気象で繁殖したのかもしれない」
「この人がヒッカリカエルの毒で眠ってるなら、解毒すれば目を覚ますってこと?」
「ノ・ス・ト・ロ・ビ・ア!!」
「残念だけど、ヒッカリカエルの毒は無理ね。毒というより、ウイルス感染のようなものだから」
「ノス……」
「ヒックリカエルでもノストラダムスでもいいから、さっさと解毒方法教えなよテネブラエ」
「……ローズマリーならば、ヒッカリカエルの毒も解毒出来ると思います」
「……テネブラエ、諦めたんだね」
ローズマリーは、ここから西にあるカンベルト洞窟一帯に自生している。しかし最近の異常気象で枯れてしまったと聞いている、とリフィルは語った。
じゃあどうするんだ、と問うジーニアスに返す彼女の口調が、がらりと変わった。
「火事の原因はわかったのだから、村の人に説明して船を出してもらいましょう」
「えっ!?」
ベルクやリーガルをほうって行く気なのか。問いに、やはり冷たい口調でリフィルは返す。エミルやマルタの目的はセンチュリオン・コアを集めることだ。こんなところで足止めを食ってはいられないだろう。
彼女に反論したのはエミルだった。戦闘時でもないのにラタトスクモードになった彼は、噛み付くように怒鳴り声を上げる。それに対するリフィルが落ち着き払っているのを見て、クライサは彼女の思惑を察した。
結局、自身の目で見ていない以上可能性はゼロでない、とカンベルト洞窟に向かうことになった。リフィルは特に不満を言うでもなく、いつも通りの様子に戻っている。
「……ねえクライサ。さっきの姉さん、どう思う?」
ジーニアスに問われて、どうって?と質問で返した。
「なんか変だったじゃない!あんな、エミルを試すような言い方して……」
「アンタがそう思うのなら、実際試してたんじゃないの?」
「だから、なんで試して……はぁ、もういいよ」
村を出て数分。最後尾を歩いていたクライサが足を止めた。
「ごめん、あたし、あの村に別件で用があるんだった」
首を傾げるエミルらに手を振り、ローズマリー探しは任せて村で待つことにする、と告げる。了承した仲間たちの背が見えなくなってから、クライサは腰に差した剣の柄に手をかけた。
「せっかく一人になってやったんだ。さっさと出てきたら?」
ねぇ、ヴァンガードの諸君?