半年前に元の世界に帰ってからも、鍛練を怠ることは無かった。軍人になると決めた頃から習慣付けていたことだから、特に意識してやっていたわけではない。それに鍛練自体も結構楽しんでいるから、苦に思ったこともそれほど無い。日々の努力はちゃんと実を結んで、相応の力として身についていると思うし、実際そうだろう。だが。

(ナメてたのは、あたしのほうか)

雪の地面に突き刺さった刃を見つめ、自嘲的に笑った。両手に握った剣は、刃の真ん中部分から折られてまともな剣の形をしていない。これではそこらの魔物ならまだしも、かの世界再生の英雄を相手にすることなど出来そうにない。腰に差していた鞘をベルトから引き抜くと、不恰好な剣を収めて雪の上に放った。

クライサが発動した術を、ロイドは全て避けきって見せた。それどころか無数に降る光の雨の中を防御術も張らずに走り抜け、硬直状態にあった彼女に攻撃を仕掛けたのだ。クライサは慌てながらも双剣で防御した。
しかし刃は彼の攻撃に耐えきれず、無惨に折れて離れた地面に突き刺さった。
一年半の差は大きかった。あーあと、すぐに負けを認めた彼女に背を向けて、ロイドは去っていった。レアバードで彼方へと飛んでいったその姿を見送りながら、トリエットに用があったんじゃないのかなぁ違うのかなぁとぼんやり思っていたが、当然答えなどあるわけがない。

「……しっかし、ロイドって本当、隠し事下手だよね」

苦笑して、トリエットの町へ足を向ける。思い出すのは、彼と対峙した時にこちらを見た目だ。相変わらず真っ直ぐな色をした双眸が映していたものは、クライサが知るものと変わらなかった。

(あの頃と同じ、何かを守ろうとしてる目だ)

コレットを、仲間を、世界を守ろうとしていたあの頃と同じ光を宿していた。粛清と称して大量虐殺を行うような者があんな目を出来る筈がないことを、クライサは知っている。
ーーとなると、やはりパルマコスタを襲ったのは彼ではないという結論に行き着くわけだが。

(ロイドの目的も気になるし……)

暫く探ってみるか。ニヤリと楽しげに笑み、少女は町へ向けた足を速めた。





さて、何が出てくるかな?




 08 


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