王朝跡にて、海のシケの元凶らしき魔物を倒したのはいいが。

(あの後、どうなったんだっけ……?)

気付いたら、浜辺に打ち上げられていた。多分、あの魔物が起こした波にのまれたとかその辺だろうけど、おかげでエミルたちとはぐれてしまったじゃないか。
近くにあった小さな村で情報を集めてみると、ここはイセリアの南方にあたるらしいことがわかった。海を渡るという目的は、一応達成出来たらしい(しかし随分流されたもんだ)。まあ、エミルたちと別れてしまっては元も子もないんだけど。

(一緒に行かせてほしい、って言ったそばから別行動か)

もう溜め息も出やしない。とりあえずは情報を集めながら彼らとの合流を目指そうと、まずは東の方角、トリエットに向かうことにした。

(……あれ、は)

完全に、偶然だった。
村で消耗品を補充して、体を休めて、準備を万全にしてから砂漠に繰り出した。この辺りも異常気象に見舞われているらしく、砂漠は雪原になっていた。暑さに弱いあたしとしては誠に有り難いことだが、雪の降っているトリエットなんて違和感バリバリだ。
そして暫く歩き続け、トリエットの町が見えてきた頃。空から見慣れた物体が落ちてきた。ーーいや、降りてきたのだ。

それは町の近くで止まり、また見慣れた服装の人物が地面に降り立った。彼を視界に入れると、同時。あたしの足は、雪の地面を蹴っていた。
駆けて、駆けて。彼がこちらに気付いた時、既にあたしの体は空中に。振り下ろした刃。双剣を抜く彼。キィン、と甲高い音が、静かな雪原に響いた。

「ロイドみっけ!!」

「……っ!クライサか!!」

不意討ちで斬りかかったあたしの剣を受け止めたのは、独特の赤い服に身を包んだ人物、ロイド・アーヴィングだ。
前回の旅の時よりも随分大人っぽくなったようだし、声も低くなったらしい。身体的なほうでは成長しているみたいだけど、剣の腕はどうだろね。

後方に跳び距離をとると、こちらの意思を読み取ったらしいロイドは剣を構える。あたしも、腰に差していたもう一方の剣を抜いて、斬りかかるタイミングをはかることにした。

「半年ぶり……いや、こっちでは二年ぶり、かな」

「……なんでお前がここにいるんだ」

「ちょっとしたアクシデントでね。そっちこそ、コレットたちに連絡もしないで何してんのさ。パルマコスタやらルインやらで、アンタの名前ばっか聞いてるけど」

「……話すことは無い」

あたしに対しても、態度を変える気は無いらしい。全く隙の無い彼を前にして、ニッと笑った。





だってこんな機会、そうそう無いよ




 06 


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