海のシケの原因を探るため旧シルヴァラント王朝に向かった、トマスという男を追って。彼を探して進んでいくと、ヴァンガードの幹部だという少女(の外見だが実年齢は不明だ)が行く手を阻んだ。
アリスという名の彼女を倒すと、どうやら制御装置が壊れてしまったらしく、魔物が彼女に襲いかかった。そこに現れ、魔物を倒してアリスを救ったのは、赤い長髪の男。余裕の態度で彼女を見逃してやると、そこで漸くエミルたちのほうを向いた。
彼は、テセアラのマナの神子、ゼロス・ワイルダーだった。パルマコスタの総督夫人の頼みで、エミルたちの手助けに来たらしい。
しかし、彼がロイドの仲間だったことを知った少年たちの態度に、ゼロスは不機嫌そうに眉を寄せた。ロイドを仇呼ばわりする者とは付き合わないことにしているのだ、と。
連れて来ていた兵がトマスを保護したことを確認すると、これで自分の仕事は終わりだ、とばかりに歩き出す。少年たちの間を通り抜けようとして、彼女の存在に気が付いた。
「クラウス?」
「どうかしたの?」
「どうもしないからあたしには構わないで、二人とも……」
エミルの後ろに隠れる、小柄な少女。深く被った帽子から零れた短い髪の色に、見覚えがあった。視線を感じたのか、ちらりとこちらを見たその目も、同色。
「……なーにやってんのよ、クライサちゃん」
その名を呼んだ一瞬後、彼はエミルたちからかなり離れた場所へと引きずられていた。
「っの馬鹿ゼロス!そんなあっさり人の正体バラす奴がいるか!?偽名使ってた期間短すぎるわ!!」
胸ぐらを掴んで揺さぶってくる少女は、髪の長さこそ違うものの、記憶の中の彼女そのものだ。二年前、世界再生を行った際に共に旅した、空色の少女。
「つーかクライサちゃん、なんでまたこんな所にいるわけ?自分の世界に帰ったんじゃなかったっけ」
「むしろあたしが聞きたいよ。帰って半年でまた飛ばされてさ」
「半年?二年後じゃないのか?」
「なんか時間軸まで無視しちゃったみたいでね」
ああ、だから全く成長したように見えないのか。ゼロスはその言葉を飲み込んだ(違う意味にとられてしまっては、命の危機に瀕してしまう)。
「っていうか何よ『クラウス』って。どこぞの天使サマでも意識したわけ?」
「んなわけあるかい。たまたま頭に浮かんだのがコレだっただけだよ」
何にせよ、以前共に旅した者と再会出来た。この二年の間に、この世界にーーロイドに何があったのか、特にゼロスなら何かしら知っていそうだ。
(けど、その前に)
「……クライサ…?」
背後の少年たちが表情を変えるのが、振り返らずともわかった。
憎しみのこもった、目