助けた少年たちは、シルヴァラント人らしかった。どうやら理由あってヴァンガードに追われていたらしい。少年はエミル・キャスタニエ、少女はマルタ・ルアルディといった。

「あなたの名前は?」

「あたしは……」

クライサ・リミスクだ、と返しそうになって、止まった。
先日、パルマコスタでマーテル教会による大量虐殺ーー『血の粛清』が起こった。その主犯者がロイドだったと、クライサは聞いていたのだ。

(ロイドがそんなことをする筈はない。けど、)

ロイドをよく知らない者の中には、彼を憎んでいる人間も多数いるだろう。そういった者に、自分の正体を明かしてはマズイかもしれない。クライサは、再生の旅に同行した者として、どちらの世界でも有名な存在なのだ。

「あたしは……クラウス。よろしくね、エミル、マルタ」

「クラウス?男の子みたいな名前なんだね」

「あはは……よく言われる」

後から聞いた話では、エミルは両親を血の粛清で失ったことから、ロイドを憎んでいるらしかった。マルタは、以前再生の旅の途中で起こった大樹暴走によって、パルマコスタに住んでいた母を失い、それを引き起こしたコレットを憎んでいた。しかしアスカードで本人に会い、彼女の人となりに触れ、和解し、憎むことをしなくなったのだそうだ。

(コレットに会ったんなら、別に偽名使わなくても大丈夫そうだけど……ま、追々、ね)

エミルとマルタは、世界再生後各地で起こっている異常気象を止めるべく、精霊ラタトスクを目覚めさせようとしているらしい。彼らの説明に加わるべく、センチュリオン・テネブラエという黒い犬のようなものまで姿を現した。全く、何から驚いたらいいものか。

「……なるほど。その、マルタの額にあるラタトスク・コアを孵化させるために、テネブラエみたいなセンチュリオンを全員目覚めさせなきゃならないってこと?」

「そう。それでセンチュリオン・コアを集めるために、私たちは旅をしてるの」

先程のヴァンガードは、マルタの額に埋め込まれたラタトスク・コアを狙ってきたらしい。そしてマルタを守るために、エミルは『ラタトスクの騎士』となって力を得たのだそうだ(戦闘時にはラタトスクの力の憑依によって、性格が激変する。この内気君が好戦的なぶっきらぼうになるのだ)。これは何だか面白いことになりそうだ。

「ロイドに奪われる前に、コアを集めなきゃ…」

「?ロイドもコアを集めてるの?」

俯いたマルタが漏らした声に、目を丸くした。
エクスフィアを回収している筈の彼が、何故コアを集めているんだ。血の粛清の件といい、気になることが多すぎる。

「……その旅、あたしもついて行っていいかな?」

「え?」

「これも何かの縁だし、力にならせて欲しい。腕には自信があるしね」

この二人と行動していれば、ロイドに会えるかもしれない。彼がこの二年で変わってしまったのか、確認出来るかもしれない。
そして何より、

(この二人と一緒にいれば、色々楽しそうだ)





さあ、存分に楽しんでやろうじゃないか




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