空色の短い髪が風に揺れ、同色の眼には趣のある街並みが映る。
ここはアスカード。旧シルヴァラント領の街で、風の精霊シルフの影響を強く受けている地だ。
優しい風をその身に受けながら、クライサは大きな溜め息をついた。

元の世界に戻った半年後、何の間違いか、再びこの世界に飛ばされてしまった。寄った村の住民や旅人たちから情報を集めてみれば、今いるのは、再生の神子らによってシルヴァラントとテセアラが一つになってから二年経った世界。
どうやら『トリップ』というものは、本人の意思も時間軸も全く無視してくれやがるらしい。
とりあえず以前旅した仲間に会えないものかと歩いてみると、アスカードの近くで再生の神子の話を耳にした。街に来ているらしいと聞いてアスカードに入ってみたものの、探せども探せども目的の人物は見当たらない。既に街を後にしてしまったのだと判断し、次の街を目指すことにした。

(確実に誰かがいそうなところっていうと……メルトキオかアルタミラ、それとミズホぐらいかな)

イセリアにも誰かいそうだが、ジーニアスやリフィルはハーフエルフへの差別を少しでも無くそうとするため旅を続けているだろうし、コレットは神子としての仕事のために世界中を飛び回っているだろうから、期待は出来そうにない。
しかしメルトキオならゼロスが、アルタミラならリーガルが、ミズホならしいながいる(オゼットにはプレセアがいるだろうが、多分まだ再興のため忙しくしているだろう)。仮に留守だったとしても、周囲の人に行方を聞いたり帰りを待つことが出来そうだ。

「……ん?」

どこに向かうかは地図を手に入れてから考えようと、とりあえず近くの街まで歩いてみることにした。
すると、道の真ん中に人だかりができている。何事かと様子を伺ってみると、同じような格好をした者たちが大勢で二人の子どもを囲んでいるようだった。

(あれは確か……ヴァンガード?)

ここが再生されて二年後の世界だと聞いた時、テセアラ人のシルヴァラント人差別の話も聞いていた。世界が一つにされたと言っても、衰退世界であったシルヴァラントと繁栄世界であったテセアラの文明の差は大きすぎたのだ。
コレットやロイドたちが望んだ平和はすぐに終わりを迎え、テセアラ人はシルヴァラント人を虐げるようになり、シルヴァラント人はテセアラ人や、世界再生を行ったコレットやロイドを憎むようになった。
そこで生まれたのが、シルヴァラント人を解放せんとする組織、ヴァンガードだ。

(と、すると……囲まれてるあの子たちはテセアラ人かな?)

常備しているナイフを数本両手にとり、少年少女を囲んでいる男たちに向け放った。彼らは予期せぬ奇襲に慌て、こちらに注目する。その隙に少年が包囲を切り崩しにかかり、動揺した男たちにクライサが斬り込んでいった。





運命の出逢い、ってほどじゃないけども




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