道中で会ったしいなは、ゼロスからの伝言を預かっていたためクライサに会いにきたらしい。さすがミズホの情報網、こちらがレアバードで移動していてもしっかり居所を把握していてくださる(発信器でもつけられてんじゃないかと思う。ああ、彼らの場合は式神か)。
伝言は、ゼロスがフラノールに向かっているから、そこで一時合流しようという内容だった。担当の街はほとんど回ったし、この場からも近いしとクライサはすぐ頷いたが、おもむろに考え込む。そして首を傾げるしいなに、ある提案をした。





After Story/05
スローモーションの背景






ディザイアンの残党は、基本的に一組10人弱で襲ってきた。ほとんどが街道で。街中で襲われることも無くはないが、そういった時は隙をついた奇襲や暗殺形式で、少人数が基本だった。
というか、残党と言うわりにはかなりの人数がいるらしい。これまでに薙ぎ払ってきた者の数から考えれば、人間牧場のいくつかをアジトにしていそうなぐらいの人数はまだディザイアンをしているようだ。バカどもめ。

フラノールの街に着き、消耗品の調達や武器の整備を済ませてからクライサはゼロスの姿を探した。全体的に白が基調になっているこの街では、自分の空色以上にゼロスの赤髪はよく目立つ。
見慣れた赤髪はいないかと辺りを見回しながら歩いていると、教会の前あたりの通りで漸くそれらしい姿を発見した。以前の世界再生の旅と同じように、雪の中を歩く女の子たちには見向きもせず、なんだかアンニュイな表情で高台から下方を眺めている。

(なーに考えてんだか)

いつもはクライサちゃんクライサちゃんと鬱陶しく引っ付いてくるくせに、今日はなかなかこちらの存在に気付かない。珍しいこともあるもんだと苦笑しかけた時、クライサの目がそれを見つけた。
教会の陰。フードを深く被った、おそらく男。ずっと動かなかった人影が、杖を握った腕を振り上げるのが見えた。

向けられたのは自分ではないのに、明確に肌に感じた殺意。彼は気付かない。人影の口が動く。発動した魔術。まだ気付かない。走り出した足。人影が笑った。どうして気付かない!

「ゼロス!!」





ああ、予感の原因はこれか






 AS-05 


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