「ディザイアンの残党?」
引き続き各地の様子を見て回っていたクライサは、アルタミラを訪れたところでリーガルの使いに呼ばれ、レザレノの社屋にやって来た。
屋上庭園でアリシアの墓に挨拶をし、次に向かった会長室で待っていたのはレザレノの会長さまことリーガルさん。久しぶりに会う顔に笑みを浮かべて、少し疲れた様子の彼が促すままにソファーに腰を下ろした。
一通りの挨拶の後、すぐに本題に入った彼の言葉に、クライサは眉を寄せた。ディザイアンはユグドラシルを頭に置き、クルシスの下で活動していた筈だ。世界統合後、クルシスのハーフエルフたちはクラトスに率いられて、デリス・カーラーンと共にこの星を後にした。というのに、未だディザイアンとして動いている馬鹿がいるというのか。
「ディザイアンらしきハーフエルフの集団が各地で目撃されている」
「ふーん、まだ懲りてない奴がいたんだね」
「ユグドラシルがいなくなり、クラトスの命令があってもこの地に残ろうとする者がいるとは……」
「ま、あれだけの組織がすっきりさっぱり無くなるとは思ってなかったけどさ」
それにしても、残党か。ハーフエルフといえば魔術も使えるし、ディザイアンはそれなりの武力も持っている。些か厄介だ。
「残った者たちが単に固まっているだけ、というなら問題は無いのだが…」
「そだね。奴らが何も企んでないわけがない」
「ユグドラシルを倒した者……私たちを狙ってくる筈ですね」
隣の席に腰掛けたプレセアの言葉にリーガルが頷き、クライサは顎に手を当てる。ちなみにプレセアはディザイアン残党の話がリーガルに伝わった際、暫くアルタミラで保護されることになったのだそうだ。
「まず両世界の神子とロイド……ジーニアスにリフィル、しいな、か……」
世界再生を成し遂げたコレットは最初に狙われる存在だろう。そしてゼロスも未だ神子の力を持っている。特殊なエクスフィアを持つロイドも名が知れている。というか、あの旅に関わった者はみな危険そうだが。
リーガルはレザレノのトップだ。向こうも易々と手は出せまい。彼に保護されているプレセアも言わずもがな。しいなは今やミズホの頭領だし、彼女が狙われると知ったら里の者が黙っていないだろう。それに彼女がいくらドジだとはいえ、生死に関わるミスはしない筈……だと思う。
「ジーニアスとリフィルは大丈夫だろう」
「そうですね。リフィルさんなら、きっと狙われた時の対処は知っている筈です」
「ロイドとコレットは……まぁ、コレットがいれば大丈夫でしょ」
「……そうだな」
「……そうですね」
と、なれば。
「おいおーい、また自分のことだけ棚に上げてない?」
After Story/03
騒動の火種再び
突然の声に何だこの野郎と出入口に目を向けてみれば、クライサが予想した通りの人物が入ってきたところだった。テセアラの赤い神子。
「なんだ、ゼロスも呼んでたの」
「ああ。……だが、神子は既に知っていたようだな」
「ミズホのほうからな。で、クライサちゃん」
応接セットの辺りまで歩いてきた彼は、テーブルの上、クライサの前に置かれたカップを手に取ると、中身を全て喉の奥に流し込んでから言った。
「自分も狙われてるってこと、忘れてたろ」
「……ああ」
そうか。こいつを守ってればそれで良し、じゃないのか。今気付きましたと言わんばかりに手を叩いた彼女に、ゼロスはがっくりと肩を落とした。
そういやあたしも当事者でした