散り散りになった仲間を助けて回っていたらしいロイドと合流し、その隣にアホ神子の姿を見つけたクライサは、数メートルの助走の後に強く地を蹴った。

「なにミトスごときに乗っ取られてんだテメェはァァア!!」

「おごふぅッ!!」

「ドロップキック!?」

通常戦闘ではまずお目にかかれない彼女の必殺技を顔面に受け、数十メートル吹っ飛んだゼロスを仲間たちの憐れそうな眼差しが追う。しかし誰一人として彼の心配をする者はおらず、そしてクライサを窘める者ももちろんいなかった。オリジンと契約した直後のあの時、ゼロスを身代わりにしたのは彼女だろうに。自身の行いを完全に棚に上げているクライサに、被害者である彼が呻き声で抗議するが、聞き入れられる筈もなかった。

「あれ、いつまでミトスの輝石くっつけてんの?」

「なんか外れねーのよ。ま、もう身体の自由奪われることも無さそうだし、しょうがねーからほっといてんの」

「ふーん……また同じようなことあったら困るし、今のうちにそれ砕いちゃおうよ。ゼロスごと

「やめてください!!」

自身の心の弱さを克服した証にとデリスエンブレムを手に入れたロイドたちは、デリス・カーラーンの最深部、ヴェントヘイムに足を踏み入れた。
立ち塞がる天使を打ち倒し、更に進んだ先で、ユグドラシルの姿を見つけた。こちらを向くこと無く、譫言のように同じ言葉を繰り返している様はまるで人形のようだ。不思議に思っていると、輝石がゼロスの体から離れ、ユグドラシルの元へと飛んでいく。

「わざわざ運んでくれてありがとう」

人形のようだった彼は、嘲笑うかのような笑みを浮かべて言った。ああなるほど、そういうことか。彼は輝石が本体であると言える存在だから、拠り所となる肉体があれば何度でも蘇ることが可能なのだろう。
ユグドラシルーーミトスとロイドらの口論じみた会話が続く中、クライサは黙ってその様子を眺めていた。今更、彼に言いたいことなんて無い。自分やロイドたちが何を言ったところで彼の考えが変わるとは思えないし、これから自分たちがとる行動も変わることはないのだろうから。





さあ、最後の戦いだ



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