ミトス改めユグドラシルはレネゲードやユアンに攻撃をくわえ、同じようにプレセアに向けて光の球を打ち出す。しかしそれは彼女を庇ったアルテスタに命中し、またタバサも攻撃を受けて倒れた。
現れたプロネーマと共に、ユグドラシルはクラトスを連れて消える。それを追おうとしたロイドたちの前に姿を現したのは何人もの武装した天使で、彼は邪魔をするなと剣を構える。それを制したのは、少女の声だった。

「輝く御名の下、この穢れた魂に裁きの光を降らせたまえーー」

なんとなく聞き覚えのある台詞に、ロイドたちの視線が少女に集まる。目を伏せていたクライサの足元には、彼女が使っていたどの術とも違う陣が広がり、その身を包むように羽のようなものが散っていた。驚愕と困惑で何も言えない。目を開けた少女はニヤリと笑い、術式を展開させたまま腰の双剣に手を伸ばす。

「巻き込まれたくないなら下がってなよ」

天使が向かってくる。クライサの意図を読んだロイドが仲間たちの元へ下がる。未だ動けずにいる彼らの前で、少女が剣を抜いた。

「ぶっちゃけ暴れたくってしっかたないんだよねジャッジメント!!

嬉々とした彼女の声と共に、無数の光の雨が降り注ぐ。その凄まじさに一同は呆気にとられ、攻撃が命中した天使たちは悲鳴を上げて次々に倒れていく。辛うじて残ったものには、クライサ自ら剣を振るって止めをさした。
瞬殺的な戦闘が終わっても、一同は暫し呆然としたままだった。アルテスタの呻き声で漸く、彼に治癒術をかけていたリフィルが我にかえる。他の仲間たちも次々に動き始め、負傷したユアンは、レネゲードを退避させねば、と慌てた様子で去っていった。

「まさか天使術まで使えるようになるとはな」

アルテスタたちを囲む輪の外でそれを眺めていると、隣に立ったゼロスが言った。

「うん。なんとなく」

「なんとなくで出来ちまうんだから、クライサちゃんってこえーよ」

万能だよなと笑う。けどリフィルたちのように治癒術は使えないと返せば、そういえばそうかと納得された。

「クライサちゃんは手伝わなくていいのか?」

「あたしに出来ることなんて無いっしょ。人数いても邪魔なだけだし」

「ま、それもそうだな」

アルテスタとタバサを家の中に運ぶ仲間たちに続くように、足を踏み出した。背を向けられたクライサは、笑みを浮かべたまま彼の名を呼んだ。

「貸しにしとこうか?」

振り返った彼の目は、表情と違って笑ってはいなかった。





気付く人、黙る人




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