偶然?不運?事故?嘘や冗談といった言葉で疑うのが馬鹿馬鹿しいほど、面倒なことに直面している。
運命?そんな言葉でくくられたくなんかない。
「クライサ…」
聞いていたのかと問われ、荒い息のまま、耳を指した。パーティーメンバーの全員がエクスフィアをつけている上に、クルシスの輝石が二つもあるのだ。馬鹿みたいに反応するアイオニトスが引き起こす痛みが、全身を蝕んで仕方ない。痛覚を含む全神経が過敏になって、聴覚も素晴らしいほど鋭くなって吐き気がする。
「アンタたちが戻る前に聞いてたから、今更驚きはしないけどね」
それに死ぬ気も無いから。悪戯っぽく舌を出した瞬間、足元がふらついて視界が揺れた。一番近くにいたゼロスが咄嗟に支えてくれたので、無様に倒れることにはならなかったが。
「俺たちと離れたら、天使化は治まるのか?」
「アイオニトスを捨てるって選択肢もあるぜ」
ロイドとゼロスの言葉にも、アルテスタは頷かない。一度反応を見せたアイオニトスが、途中で反応を止めることは無い。クライサの身体も同じだと、苦しそうに言った。つまり、何をしたところで無駄だと。
黙り込む一同の中で、しかしクライサは笑った。
「よかった。ロイドたちと一緒にいられなくなるのは嫌だし、もし」
もしも、アイオニトスを、このピアスをあたしから引き剥がすと言うのなら
「アンタたちを殺してたかもしれない」
それだけは、許さない。
笑みを浮かべたままで言った彼女に反し、ジーニアスをはじめとした過半数が青ざめた。プレセアが後退り、ゼロスが目を見張る。
その様子を一通り眺めてから、冗談だよとまた笑った。
「しっかし、こんな状態でよく笑ってられるなークライサちゃん。一応命の危機なんだぜ?」
「聞こえなかった?死ぬ気なんか無いんだってば」
ゼロスの腕の中で身体はぐったりしているとはいえ、笑顔はいつもの彼女らしいものだ。今度は安心して、ロイドたちは肩から力を抜いた。
彼女はゆっくりと体を起こし、アルテスタに目を向ける。
「だってほら、解決策あるんでしょ?」
アルテスタが頷く。クライサがもう一度口を開く。
「あたしもエクスフィア着ければ、抵抗が強くなって天使化を抑えられるんじゃないかって。なんか抑制鉱石が切れてるらしいから、ロイドたちで一つ取ってきてもらえない?」
…………は?