エルフの里、ヘイムダールに向かい、ラーセオン渓谷でマナリーフを得て。ルーンクレフトを作るのに必要なものは残り一つ、マナのかけらだけとなった。
マナのかけらは、クルシスの本拠地であるデリス・カーラーンにあるという。救いの塔へ向かうべく、一行はゼロスのクルシスの輝石を求めて彼の妹の元へ向かった。

あの夜のことがあってから、クライサは体が辛くなるとゼロスにだけそれを告げるようになった。
相変わらず、ロイドやコレットたちには伝えていない。リフィルやリーガルたちですら気付いていないだろう(そのくらい、普段の彼女の態度は自然だった)。クライサも、誰か一人でも自分の状態を知っていることが精神的安定に繋がっているのだろう、以前ほど痛みを訴えないようになっていた。
そう思っていたのだが、違ったようだ。

ゼロスの妹であるセレスから輝石を受け取り、修道院を出て今後の予定を確認していた時、リフィルの言葉を聞いていた者たちの中に、クライサの姿だけが無かった。
ロイドがそれに気付いた直後、建物の陰から駆け足でやって来た彼女の苦笑した顔は、誰が見ても異常だと思う程、青白かった。

「クライサ、すごく顔色悪いよ!」

「そう?昨日ちょっと寝不足だったからかな…それとも貧血気味だったり?」

「少し休みましょうか?そんな状態で敵陣に乗り込むなんて、無謀過ぎるわ」

「大丈夫だよ。気分の悪さとかは全く無いし。普段通りにしてれば治るって」

心配そうにしている皆を説得し、そのまま救いの塔へ向かうことになり安堵の息をついたクライサの肩に、男が手を置いた。その人物以外の全員が、既に彼女に背を向けて歩き出していたので、手の主が誰かを見抜くのは難しくない。
だから、ゼロス、と振り返りもせず名を呼んだことに、驚いたわけではなかった。

「……クライサ、ちゃん?」

「あ…な、んでもない、よ?ごめ、ちょっと驚いた…だけ」

手を置いた瞬間、哀れになるぐらい大きく跳ね上がった肩に、目を見開いた。振り返ると同時に素早く後退った様に、固まった。血の気の引いた顔を見て、先の言葉を信じられるわけがなかった。

「ロイド!」

手が白くなるような強さで胸の辺りを掴んで、膝から崩れ落ちた少女を抱きとめて、先頭を歩く少年を呼んだ。





これのどこが、大丈夫、だ




 06 


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