全てのマナの楔を抜き、良かれと思ってやったことが裏目に出て、起こったのは大樹暴走。シルヴァラントを覆った大樹はパルマコスタや旧トリエット跡を襲い、放っておいては世界そのものが滅びてしまうというところまできてしまった。
それを防ぐため、しいなはレネゲードと共に魔導砲の元へ、ロイドたちとクラトスはイセリア人間牧場へ向かった。

無事に大樹の暴走を鎮められたかと思えば、そこで明らかになる新たな問題。コレットが、身体が結晶化してしまう原因不明の病にかかっていたのだ。
サイバック等で情報を集め、なんとか彼女を元の身体に戻す方法を知り、『ルーンクレフト』なるものを作るために材料を集めることになった。

「……何してんの?」

クライサは、自身に覆い被さる赤毛の男に問うた。

アルタミラのホテル。コレットに気を遣ってか、それぞれ一人部屋をとり体を休めていた(高かっただろうに)。
夜も更け、皆が寝静まった時間帯。人を訪ねるには、些か遅すぎる時間である。

「何って……夜這い?」

そんな時間に仮にも女性の部屋を訪ねたのは、アホ神子ことゼロスだった。…いや、訪ねたと言っても、ドアをノックされた覚えも部屋へ通した覚えも無いのだが。
顔を挟むように、シーツに置かれた両手。垂れた赤髪が頬を擽る。間近に見えるアイスブルーの瞳。
床に足をついたまま体を捻っているという無理な体勢の筈なのに、彼の顔は笑っていた。

「バカ言ってないで出てってよ。眠いんだから」

「ふーん、眠いから?」

「は?」

「いつものクライサちゃんなら、俺さまが部屋に入る前に気付いてたでしょーよ」

この体勢になるまで。彼の髪が頬に触れるまで、部屋に入ってきた気配に気付かなかったーー気付けなかった。

「……そう。睡魔が限界まで来てて、」

「嘘。……隠しても無駄だぜ」

彼の顔が離れる。同時に腕を引かれ、強引に体を起こされた。バランスを崩した体は、ベッドに腰掛けたゼロスの腕の中へ。

「っ、はな……ッ!!」

はなせ、と暴れかけた瞬間、全身に走った痛み。大きく肩を跳ねさせ、力無く彼の胸へと倒れ込んだ。頭上で、溜め息を吐く気配がする。

「やっぱな。最近ずっと体調悪かったろ?」

「…っなんだ…やっぱ、バレてたんだ…」

みんなには、言わないでほしい。今は、コレットの身体を戻してやるのが何よりの優先事項だから。自分のことで足を止めるなんて、絶対嫌だから。

「……お願…だから……黙って、て……」

痛みに顔を歪め、弱々しい声で言った彼女は、そのまま意識を無くしてしまった。

(……やれやれ、だな)

残ったのは、辺りを包む静寂だけ。ゼロスは何も言わず、腕の中の少女をただ抱き締めた。





彼女に、何が起きてるんだ




 05 


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