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「遅いよ、大佐」

通りの中央に停められた車の前に、ロイ、そして彼を挟むようにホークアイとハボックが立っている。
その周りには青や黒の軍服に身を包み拳銃を手にした男たち。
彼らが、スカーを完全に包囲していた。
彼に向け発砲したのは、ホークアイだ。
彼女の両手に二丁の拳銃が握られている。

「貴様だな、一連の国家錬金術師殺しの犯人は」

男はやはり、答えない。
肯定はしないが否定もしない。

「何故、数多いる錬金術師の中で、国家資格を持つ者ばかり狙う?」

「……どうあっても邪魔をすると言うのならば、貴様も排除するのみだ」

「……おもしろい!」

男の言葉に、ロイの目の色が変わった。
取り出した手袋を身につけ、手を出すなと告げてから部下たちの元から一歩前に踏み出す。
あることに気付いたホークアイが彼の名を呼ぶが、それは彼の正体をスカーに知らせることとなった。
国家錬金術師か、と問う彼に、ロイはご丁寧に自ら名乗る。

「神の道に背きし者が、裁きを受けに自ら出向いて来るとは……今日はなんと佳き日よ!!」

「私を焔の錬金術師と知ってなお戦いを挑むか!!愚か者め!!」

手袋をした右手の指を擦り合わせ、今にも攻撃に出ようとしたロイの足を払ったのは、ホークアイだった。
当然焔が放たれることはなく、彼は支えを失い尻餅をつき、その頭上を、彼の頭を狙ったスカーの掌が通り過ぎる。
直ぐさま拳銃を構え、発砲した彼女の銃弾を、スカーは素早く身を引き避けた。

「ナイスだよ、中尉!」

だが、背後から聞こえた声に、一瞬対応が遅れる。
振り返れば、視界に入った少女は蹴りを繰り出すまさにその時。
防御をとろうとした腕は僅か間に合わず、勢いのついた、左足による蹴りを食らってしまった。
とはいえ掠っただけなので、大したダメージは無い。
地に落ちるサングラス、露になる額の×印の傷、こめかみから流れる血。

「いきなり何をするんだ君は!!」

尻餅をついたままの状態でロイが声を上げるが、ホークアイは拳銃を構えたまま返さない。
代わりに、スカーと向き合ったクライサが怒鳴るように言った。

「雨の日は無能なんだから、前に出てくんじゃないの!!」

彼女の言葉に、ロイはあからさまに凹んでいるようだが、誰もフォローを入れることはしない。
実を言うと、それほど珍しいことではないのだ。
上司と部下、という関係であるにも関わらず、クライサとロイのやり取りはいつも対等で、普通なら失礼にあたる台詞も、この二人の間では日常茶飯事だったりする。
そう、彼らの関係は上司と部下の上下関係ではなく、まさに兄妹のようなものなのだ。









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