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「……錬金術師とは、元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者……それすなわち、万物の創造主たる神への冒涜」

男が言う。
自分は、神の代行者として裁きをくだす者だと。

「神ねぇ……悪いけど、あたし、神様って信じてないんだよね」

パン、と両手を合わせて、雨に濡れた地面に触れる。
瞬時に凍ったそこからは鋭い氷柱が生み出され、地面を這うように何本もの氷の棘がスカーへと向かっていった。

「これから送り届けてやろう、神の元へと」

「お断りだよ!」

彼の右手が氷柱を破壊し、クライサを襲う破片を彼女は壁を錬成し防いだ。
次いで男は、すぐ脇にある建物の壁に手を当てた。
ヒビが入り、崩れる外壁。
戦うには狭い路地だったため、降ってきた瓦礫を避け切れず頭部に受けてしまった。
こめかみ近くから流れる血を、手の甲で乱暴に拭う。

どうしたものか。
彼は体術もかなりのものだし、速い、戦闘経験も半端じゃない。
勝つことどころか、攻撃を当てることすら難しい。

「クライサ!早く逃げーー」

「うるさいよ。それはこっちのセリフ」

背後のエドワードに、視線さえ向けることはしない。
スカーが彼を見逃してくれるわけがないのだ。
彼らを置いて逃げる気なんて、更々ない。

再び男が間合いを詰めてきた。

(はやい)

これでは、並の軍人では応戦することも出来ないだろう。
この速さに対するのは難しい。

(けど、)

突き出された腕に右足で着地し、左足で肩を蹴って、宙高く舞った。
合わせた両手、青白い錬成光。
降り落ちる雨が、凍った。

(あたしは、負けない)

取り出したナイフに氷製の刃をプラスさせて、二本の短刀で斬りかかる。
瞬きすらさせない動きで振るわれる刃を避け、スカーはどんどん後ずさっていく。
狭い路地から大通りに出た途端、クライサは男とは反対方向、後方へ跳んだ。

「!!」

十発の銃声。
男は反射的に全ての弾丸を避け、大通りのほうに目を向けた。










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