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ホークアイの傷はメイが塞いでくれたようだ。
敵が全て倒れたのを確認し、剣を納めたリオがそちらを向けば、安堵した様子で彼女を抱き締めるロイの姿が見え、リオもまた安堵し微笑む。

しかし、それも束の間。

「ーー!!」

勢い良くリオが振り返ったことで、ロイやスカーたちもそちらを向く。
老人が落とした、賢者の石の入った小瓶が転がっている。
それを拾い上げた者がいた。

「……閣下」

キング・ブラッドレイ。
左目を潰され、肩や腹部を血に染めながらも彼の立ち姿には一分の隙もない。
ブラッドレイは、呟くように自身を呼んだリオに一瞥をくれると、すぐにロイへと目を向けた。

「君なら、目の前で大切な者が倒れたら迷い無く人体錬成に走ると思ったのだがね」

彼の言葉に、ロイは冷静に返す。
少し前の自分ならそうだったかもしれない、と。

「今の私には、止めてくれる者や正しい道を示してくれる者がいます」

ブラッドレイは小さく声を立てて笑った。

「いつまでも学ぶことを知らん哀れな生き物かと思えば、君たちのように短期間で学び変化をする者もいる」

腕を伝う血が落ちる。
同じ人間をベースにした人造人間と言っても、リンとは違って再生能力は持たないようだ。

「まったく、人間というやつは……思い通りにならなくて腹が立つ」

それはとても、腹を立てている表情には見えなかった。
どちらかと言えば、幼い頃に何度か向けられた表情に近いように思えて、リオは内心動揺する。

と、メイが何かに気付いたようで足元を見下ろした。
彼女の足の下にあるのは、五角形と円を組み合わせた錬成陣。
この真下にいる、と彼女が告げた途端、ジェルソに捕らわれた老人が暴れ出した。

「あのお方の邪魔はさせん!」

そしてその直後、彼は血塗れのジェルソと共に穴から落ちてくることとなる。
穴の上から近付く気配に、ヤバイ、と感じたダリウスは青ざめた。

穴から姿を現したのは、影だった。
それを足場にしてゆっくりと地に降り立ったのは、小さな身体。
ホーエンハイムによって閉じこめられていた筈の、プライド。

「セリム……」

「……ああ、来てしまったんですね。お義兄さん」

彼の微笑みにリオが目を見開くのと同時に、ブラッドレイが動いた。

倒れた男たちの手から剣を奪い、両手にそれを構えて駆ける。
すぐにロイが指を弾いて焔を生み出すが、それはすれすれで避けられて接近を許してしまった。
両手のひらを貫く刃。
磔にされる形で地に縫い止められたロイは、両手を貫かれる激痛に呻く。

「大佐…!!」

「兄貴!!」

ロイの危機にリオたちは駆け出すが、しかし彼らを中心に円を作るプライドの影に阻まれて近付けない。
影は老人の胸を貫き、彼の全身に巻き付くとプライドによって描かれた錬成陣の中心、ロイたちの真上へと持ち上げる。

「これで五人目」

最後のひとりだ。
告げられた瞬間、錬成陣が発動した。









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