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「エド、大丈夫かい?」
心配そうに声をかけてきたイズミに、エドワードは出来るだけ平静を保って笑顔を返した。
「大丈夫ですよ。師匠も知ってるでしょう?あいつが…クライサが、殺されても死なない奴だってこと」
クライサは死んでない。
死ぬ筈がない。
エドワードはそう信じて、彼女の身を案じることをやめた。
するだけ無駄の心配をするよりも、現状を何とかしなくてはならない、と思ってアルフォンスの名を呼んでいるのだが、一向に目を覚ます気配がない。
すると、頭上に錬成陣のようなものが浮かび上がった。
その中心から現れ、自分たちと同じように床に落とされたのはロイだ。
彼と一緒に陣から出てきたプライドは、父のそばに下り立つと落ち着いた様子で言う。
五人目です、と。
「大佐!」
体を起こしたロイにエドワードが駆け寄り、大丈夫かと声をかける。
「鋼のか…どこだ、ここは」
「親玉の所だよ!大佐は何があったんだ?」
「…真っ白い空間の、大きな扉の前に放り出されて…」
「扉!?」
それを真理の扉だと瞬時に察したエドワードは、すぐにロイの手足があるかを確認した。
真理を見たということは、自分たち兄弟やイズミ、クライサと同じように対価をとられたということだ。
何を持って行かれたのか、確認するために彼の足を掴んでひっくり返してやると、たまらずロイが声を上げる。
何をする、そこにいるのか鋼の、と。
それに首を捻るのはエドワードだ。
そこにいるのか、とはどういうことだ。
「何言って……」
自分は身を隠した覚えはないし、彼に駆け寄ってからは真正面に立っていた。
「真っ暗で何も見えん。ここはどこだ?明かりは?」
だというのに、ロイの言葉は、まるで。
「……何も、見え……ん」
ーーまさか。
立ち上がった彼はふらりと歩き出す。
誰の姿も見えない暗闇の中、しかし何かに足をとられて転んでしまう。
何に躓いたのかもわからない。
見えない。
そう、暗闇の中にいる、彼にだけは。
まさか。
プライドが笑った。
「目が見えないのですか?」
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