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「さてと、どうしたもんかな」

乗客が集められている車両の中。
クライサを挟みうちにするように、二つの銃口が向けられていた。
だが、彼女に動じる様子は全く無い。

「おい嬢ちゃん、いい加減に観念したらどうだ?」

「冗談。観念するのはそっちでしょ?」

クライサの足が床を蹴る。前方の男に向かい一直線に駆け出した彼女に、二人の男は慌てた。
後方の男は、仲間に当たってしまってはまずいと下手に発砲出来ず、また前方の彼も、駆けてくるクライサとの距離が近すぎて撃てない。男が動揺している間に懐に飛び込むと、その鳩尾に容赦のない肘鉄を食らわせた。
通路に崩れ落ちた仲間を見て、舌打ちをした男は銃を捨て、懐からナイフを取り出す。

「このガキ……ッ!!」

「そのガキにやられても、文句言わないでよね」

突っ込んできた男のナイフを持つ右手首を掴み、自身の体を回転させるようにして勢い良く後方へと引く。男がバランスを崩したところで手を放し、そのまま左足を軸に回転し男の後頭部に右足による後ろ回し蹴りを食らわせた。彼はそのまま気を失い、先程肘鉄によって崩れた男の上に重なるように倒れる。
鮮やかにして流れるようなその動きに、車両の隅に身を寄せていた乗客たちが拍手をおくった。

「お姉ちゃん強いね!おじさんたち、あっという間にやっつけちゃった!」

「君は一体何者なんだ……?」

乗客たちの中から聞こえた声に振り返ると、幼い少女とその父親らしき男性が立ち上がっている。

「ただの錬金術師ですよ」

ニコリと笑みを浮かべると、少女の頭をくしゃりと撫でて、クライサは更に前方の車両へと向かった。







『あーあー、犯行グループのみなさん。機関室及び後部車両は我々が奪還いたしました。残るはこの車両のみとなっております』

一等車以外の全車両にいた男たちを拘束し、残った車両の扉の横でタイミングを待っていると聞こえてきた声は、エドワードのものだった。

『大人しく人質を解放し、投降するならよし。さもなくば強制排除させていただきますが……』

「ふざけやがって……何者か知らんが、人質がいる限り我々の敗北は無い!!」

同様に扉の向こうから聞こえた声は、おそらく犯行グループのリーダーのものだろう。

『あらら、反抗する気満々?残念、交渉決裂。人質のみなさんは物陰に伏せてくださいねー』

という言葉を最後に、エドワードの声は聞こえなくなった。代わりに耳に響く、激流のような凄まじい音。おそらく一等車の前の炭水車から、水道管か何かを錬成して水を引っ張ってきたのだろう。
タイミング良く扉を開けると、大量の水と共に四人の男たちが流れ込んできた。

「いらっしゃーい」

車内の水分子は十分。錬金術のほうも調子は万全そうだ。リーダーと思われる男をエドワードに任せ、それ以外の男たちに満面の笑みを見せつける。
当然彼らは、可愛らしい少女の笑顔にときめいている余裕も無い。ボキボキと指を鳴らして近付いてくる彼女に、死すら覚悟した。








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