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リンとクライサが、彼を飲ませはしまいと走った。
エドワードがそれに続く。
彼の腕をリンが掴んだ時、クライサの姿をしたままのエンヴィーが手を伸ばした。
人柱を飲ませるわけにはいかない。
その手は、グラトニーの前に飛び込んできたエドワードの腕を掴む。
エドワードとリンはリオの腕を引き、クライサは彼を後ろから押し出そうとし、エンヴィーはそこから人柱だけは脱出させようとエドワードの腕を引く。
そしてアルフォンスも、力を貸そうと手を伸ばすが、
ボッ!!
兄に触れることは、かなわなかった。
鎧の左手が、飲まれて消えた。
抉れた大地、倒れた木。
アルフォンスの横では、上半身を失ったエンヴィーの身体が塵になって消えていく。
そこに、兄たちの姿は無かった。
「兄さん!!」
飲んではならない者を飲んでしまったことに気付いたグラトニーは、大きく開いた口を閉じていく。
収縮されていく肋骨を掴み、アルフォンスは彼を勢い良く地面に押し倒した。
「クライサ!!大尉!!リン!!」
力いっぱいその口を広げているというのに、無情にもそれは閉じていってしまう。
「兄さん!!くそぉおお!!出せよ!!兄さんを!!」
出してくれ、兄を、仲間たちを。
彼の願いは聞き届けられない。
グラトニーの肋骨は鎧の右手を拒絶するように弾き、めきめきと音を立てて、完全にグラトニーの腹から口が消えた。
「むり。飲んじゃった」
その言葉に、絶望した。
「うそだろ……クライサ……兄さん…」
膝をつく。
彼を、グラトニーとシャオメイは呆然と見つめている。
嘘だろう?
嘘だ。
嘘だと言ってくれ。
友が、兄が、
戻ってこない?
「うわああぁあああぁあッッ!!!」
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