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「……確かに、あたしたち錬金術師は間違いを犯してきたよ。だからと言って、アンタのやってることを認める理由にはならないね」

拳を握り締めたクライサは、強く男を睨み付ける。
それに続くように、エドワードが口を開いた。

「スカー、ひとつ聞きたいことがある」

神の代理人とは、人の為に尽くした医者の命も平気で奪うのか、と。
彼がそう言った直後、クライサは背後に感じた気配に振り返った。
そこには、ウィンリィの姿。

「アメストリス人のロックベルという医者夫婦に覚えは無いか」

路地の奥から入ってきた彼女に、エドワードとアルフォンスは気付いていない。
目を見開いているクライサが止める間もなく、ウィンリィは彼らのすぐ近くまで歩いてきてしまう。
そこで漸くアルフォンスが彼女の姿を目に留めた。

「待っ…」

「内乱のイシュヴァールに赴いて、殲滅戦の命令が出た後もイシュヴァール人を助け続けた…」

「エド、待った!!」

クライサが声を上げても、既に遅く、それはエドワードに届かない。

「スカー!!てめぇを助けててめぇが殺した、医者の夫婦に覚えは無いか!!」

「兄さん!!」

彼がその姿に気付いたのは、その直後のことだった。

「何……なんの話……?」

目を大きく見開き、ウィンリィは立ち尽くす。
今、目の前にいるこの男が、父と母を殺した張本人なのか。
父と母に助けられておいて、その二人を殺したのか。
それを問うても、彼は否定しない。

「どうして……父さんと母さんが何したって言うのよ……殺されなきゃならないようなことはしてないでしょう!?」

足から力が抜ける。
地面に膝をつくと、両目から涙が溢れた。

「返してよ!!父さんと母さんを返してよ!!」

スカーは何も答えない。
溢れた涙は止まらない。

憲兵が落とした拳銃が、ちょうどウィンリィの視界に入ってしまったことに、クライサは気付いた。
しかしスカーを前にした今、迂濶には動けない。

「やめてウィンリィ……それはダメだよ」

「ウィンリィ!!」

「やめてくれ、ウィンリィ!!」

伸ばされた手は、地に落ちた拳銃に触れる。
震える手が、それを持ち上げる。

『復讐は、新たな復讐の芽を育てる』

少女は銃口を、男へと向けた。









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