(2 / 17)
 



まだ人造人間は出て来ていないのか、リンからの信号弾は上がっていない。
エドワードとアルフォンスはスカーを挟むように立ち、彼の出方を伺っている。
クライサはその近くで倒れている憲兵二人の様子を見ていた(スカーの地面破壊に巻き込まれたのだが、少し頭を打って気絶しているだけのようだ)。

鎧の身体の自分とは違い、かなり疲れが見えるエドワードたちに目を向けて、時間を稼がねばとアルフォンスは口を開く。
その間にクライサが立ち上がり、身構えた。

「スカー!!自分も錬金術を使ってるくせに、何故錬金術師を神に逆らう者として毛嫌いする!?」

「イーストシティでも言ったはずだ。貴様ら作る者がいれば、壊す者もいると」

スカーの言葉に、アルフォンスがピクリと反応する。
その脳裏によみがえるのは、父親によって人外のものとされた哀れな少女の姿。

「……壊すことしかしないその行為が、何を生み出すって言うんだ……神の名を出して殺しを正当化したいだけじゃないのか!?」

様子のおかしいアルフォンスにエドワードとクライサは不安げな視線を向けるが、彼の言葉は止まらない。

「ショウ・タッカーも……その娘のニーナも、神の代行者をかたって殺したのか!!」

「タッカー……そうか……貴様らも、あの合成獣にされた娘を見たのだな」

『何を生み出す』
先日スカーによって殺害された錬金術師も言っていたそうだ。
我ら作り出す者に敵うわけが無い、と。

「生み出す技術だと!?その自惚れが、あの合成獣の娘を生み出したのではないか!?」

あのような悲劇を生み出す技術が、クライサたちの崇拝する錬金術なのかと。
その言葉に、彼らは反論出来ない。
エドワードは自らの手が弟を鎧の身体にしたことを、クライサは研究員たちを犠牲にしたことを悔いていたから。

「だからって……なんで殺す必要があった!!なんの権利があってあの娘の命を奪った!!スカー!!」

声を荒げるエドワードの表情は怒りに満ちている。
しかし返されたのは、落ち着いた声だった。

「貴様らはわかっていたのではないか?」

ニーナがもう元に戻れないことを。
あのまま放っておけば実験動物と同じ扱いをうけ、一生人間として扱われなくなるであろうことを。

そうだ。
あの時、自分たちはニーナが実験室送りになるかもしれないと、心のどこかで薄々感じていた筈だ。
どうにも出来ない問題を、先送りにしただけだ。
何もしなかった。








[index]

・・・・・・・・


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -