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震える少女の構えた銃は、照準を定められない。
「……あの医者の娘か……お前には己れを撃つ権利がある」
漸くスカーが発した言葉に、ウィンリィの体はビクリと揺れた。
彼の眼は鋭さを増す。
「ただし、撃てばその瞬間に、己れはお前を敵とみなす!!」
「てめぇウィンリィに手ェ出してみろ!!ぶっ、」
「殺すか!?それもいいだろう!!どちらかが滅ぶまで、憎しみの連鎖は止められん!!」
だが忘れるな、あの内乱で先に引き鉄を引いたのは、アメストリス人であることを。
そう続く彼の言葉に、ウィンリィの拳銃を握る手の力が増す。
撃つな、銃を下ろせ、とエドワードとアルフォンスは言うが、ウィンリィは動かない。
震える両手は銃を放そうとしない。
しかしその隣で、クライサが動いた。
まるで蹴りを繰り出すかの動きで上げた足を、ウィンリィの持つ銃の先でピタリと止めた。
銃口とそれの距離はほとんど無い。
「エド、アル!」
そして彼らの名を呼ぶとともに、常備しているナイフをスカーに向け放つ(避けられたが、当てるのが目的ではないから構わない)。
兄弟はすぐさま動き出し、アルフォンスがスカーに攻撃している間に、エドワードはウィンリィの元へと駆け寄った。
「ウィンリィは任せたよ」
「ああ、わかった」
クライサが地を蹴り、攻防を繰り広げるスカーとアルフォンスの元へと走る。
エドワードは座り込むウィンリィの前に膝をつき、拳銃を握る手に触れた。
「アル、サポートよろしく!」
「うん!」
氷の刃を加えたナイフを両手に持ち、スカーに向かい素早く斬りかかる。
しかし相手も速く、掠った程度の傷しか与えられない。
片方の刃を分解され、しかし笑みを浮かべたクライサは、上空へと跳んだ。
その瞬間、後方に控えていたアルフォンスがスカーの元へ向かう大量の柱を錬成した。
それによって行き止まりに追い詰められた彼は、背にした壁に右手を触れ破壊する。
壁の向こうに姿を消したスカーを、クライサとアルフォンスは柱を足場にして追った。
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