赤星は廻る | ナノ



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「……なるほどな。ユニオンとしては、帝国の姫様がぶらぶらしてるのを知りながらほっとけないってわけか」

トリム港の宿で一息ついた頃には、すっかり日が落ちてしまっていた。宿に二つとった部屋のうち一方に集まって、ユーリたちはダングレストの件からギルド発足のことを、レイヴンはエステルを追って来た旨を話す。

「ドンはもうご存知なんですね、わたしが次の皇帝候補であるってこと」

「そそ。なもんで、ドンにエステルを見ておけって言われたんさ」

ようは監視ということだ。あまり気分の良いものではないとカロルは眉を顰めるが、エステルは気にした風でもない。二人の次期皇帝候補のうちの一方、という立場上、慣れたものなのかもしれない。

「追っかけて来たらいきなり厄介ごとに首突っ込んでるし。おっさんついてくの大変だったわよ。アカもアカで首突っ込んでくし」

「だって面白そうだったからさ」

レイヴンに恨めしそうな目を向けられたアカは、しかし何食わぬ顔ですかしている。

「……でも、どうしてエステルを?」

「帝国とユニオンは腹を探り合ってるとこだからね。動きを追っておきたいのさ」

「お前もエステルの監視を命じられたのか?」

壁際の柱に背を預けていたユーリが、ちょうど反対側の窓を背にしていたアカを見る。アカはいや、と首を振った。

「うちは個人的に、君らについて行ったら面白そうだと思っただけ。あのデッカいの……フェローだっけ?あいつにも、エステルにも、『凛々の明星』にも興味あるからね」

「いいのか?金にはならないと思うけど」

「もちろん、情報屋として商品が転がってそうな気がするからって理由もあるさ」

そうかよ、と呆れた様子で溜め息を吐く。

「あんたも簡単に言うわね。そのフェローってのを追うってことは、コゴール砂漠に行くってことよ?世界を旅する傭兵が、砂漠を知らないわけないでしょ」

「暑くて、乾いてて、砂ばっかのところでしょ」

険しい顔をするリタの言葉に、カロルが口を挟む。アカはそれに微笑んだ。

「そうさね。下手したら死ぬし、下手しなくても死ぬかもしれない、素敵に危険な場所だよ。君たちにオススメなツアー先さ」

「あんたね……」

笑顔で恐ろしいことを言うアカにリタは呆れ顔だ。そして、窺うようにエステルに目を向ける。

「とりあえず、近くまで皆さんと一緒に行こうと思って」

「それから?」

「色々回ってみて、フェローの行方を聞こうかと」

「……ツッコみたいことはたくさんあるけど……お城に帰りたくなくなった、ってことじゃないんだよね?」

「おっさんとしては、城に戻ってくれたほうが楽だけどなぁ」

監視の必要がなくなるわけだから。しかしアカは不満げだ。何しろ面白くない。

「ごめんなさい。わたし、知りたいんです。フェローの言葉の真意を…」

「ま、デズエール大陸ってんなら好都合っちゃ好都合なんだけども」

「どうしてかしら?」

「ドンのお使いでノードポリカへ行かなきゃなんないのよ。ベリウスに手紙を持ってけって」

言いながら、ベッドに座っていたレイヴンは羽織りの内側から一つの封書を取り出した。

「ベリウス……」

「ノードポリカを治める、闘技場の首領。『戦士の殿堂(パレストラーレ)』ってギルドの統領(ドゥーチェ)さ」

「そのベリウスなら、ダングレストを襲った魔物……お前さんたちの追ってるフェローってやつだな、あの魔物のことを知ってるんだと」





こりゃ、オレたちもベリウスってのに会う価値が出てきたな



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