「――…ん、ぅ」

夢と現実の狭間で、少し肌寒さを感じて布団を手繰り寄せた。すると、体が触れていなかった部分が触れてひんやりとした。あれ、なんでこんなにひんやりとするんだろう。服の上からじゃなく、素肌に布団が触れている。なんで?
ぼんやりと考えたのち、ハッと目を開けた。
――待って。私、昨日…!?

「―――っ!?」

腹部に力を入れて勢い良く起き上がった。布団がめくれた上半身を見て、思わず腕で胸を隠した。

「起きたか」
「!」

目の前に現れた大きな身体に、カッと顔が熱くなる。一瞬目を合わせて、反射的に逸らしてしまう。見れない。

「…お、おはようございます…」
「あァ、……身体、大丈夫か」
「…は…い」

うそ。少し腰と秘部が痛い。
でも今の私にとってそれが精一杯の受け答えだった。
そんな私のことをどう思ったのか分からないが、頭の上から彼がはぁと息を吐いたのが分かった。
嫌われた?呆れられた?ドクンと跳ねる心臓。

「…悪かった」
「え?」

ポン、と大きな手の平が頭に乗せられる。思わず見上げると、彼は少し困ったように笑っていた。

「クロコダイルさん、」

なんだろう。いやだ。嫌な予感がする。

「…昨日のことは忘れてくれていい」
「――…!!」

嫌だ。なんで?

「俺はもう行く。世話になった」

まって、嫌だ。忘れたくない。

「ま…って!」

玄関へ向かう彼に、急いでベッドから抜け出して側にあった服を羽織ながら呼び止める。

「忘れたくないです…忘れるのは嫌だ…!」
「…名前、」
「嫌です…!クロコダイルさん、」

もう、気持ちが溢れて止まらない。
痛みも恥ずかしさも、貴方から与えられれば幸せに変わる。

「好きです」



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