照れ屋な彼からの贈り物



教皇宮にて、女官長からの説明を受け終えた私は、一人、十二宮の階段を下っていた。
これまでの六週間(本当は七週間だけれど、最後の一週間は記憶から抹消する事にした)を、共に過ごした黄金聖闘士様達の顔を思い浮かべて、彼等との生活を振り返る。
アフロディーテ様はいつも優しかったし、ミロ様は一緒にいて楽しかった。
カミュ様はクールで物知り、シュラ様は落ち着いていて頼りになった。
アイオロス様は忙しくても明るく、アイオリア様は凛々しい戦闘時と普段のギャップが可愛かった。
それぞれが皆、魅力的で、彼等が望んでくれるのなら、どの宮であっても構わないと思っていたのに。
誰か一人、何処か一つを、私が選ばなければならないなんて……。


「……アレックスっ!」
「あ、アイオリア様。こんにちは。」
「仕事は終わったのか?」


チラと私の全身に視線を走らせ、それから、少しだけ身を屈めて、顔を覗き込むように窺ってくる。
きっと無意識の仕草なのだろうけれど、身体が大きくて凛々しい彼の、こういうところが可愛くみえてしまう。
それをアイオリア様に伝えれば、真っ赤になって照れるに違いない。
照れた彼の姿を思い浮かべ、クスリと笑い出しそうになる。


「この書類を処女宮に届ければ、今日のお仕事は上がりです。」
「なら、俺も行こう。獅子宮で一緒に夕飯にしないか?」
「では、お言葉に甘えて。といっても、私もお夕食の準備、お手伝いしなきゃいけないんでしょう?」
「ははっ。図星だ。」


何気ない会話を楽しみながら、十二宮の階段を並んで下っていく。
途中、立ち寄った処女宮では、シャカ様は不在だったけれど、彼の従者さんに書類を手渡し、そして、獅子宮へと向かった。


「あれから、たった一週間しか経っていないのに、随分と散らかっていますね、アイオリア様?」
「あ、いやっ。これは、だな……。任務で忙しくて、部屋の片付けにまで手が回らなかったというか、その……。」


ソファーに引っ掛けてあった洋服を咄嗟に引っ掴んで、アタフタとするアイオリア様。
キリッとしていて男らしい、なのに、こういうところは可愛らしい。
そのギャップが女心を巧妙に擽ってくれちゃうのよね。
ついつい手を貸して上げたくなるというか、尽くしたくなってしまう。
アイオリア様は、そんな男性だ。


「で、何処の宮にするんだ?」
「……え?」
「俺以外にも、アレックスに来て欲しいと望んだヤツはいると思うんだが?」
「は、はい。」


出来立ての夕食を囲み、カチャリとフォークを置いたアイオリア様が、「やはりか。」と呟いてから、苦笑する。
私も食事の手を止めて、彼を見返した。


「まぁ、良いさ。取り敢えず、アレックスが獅子宮に来てくれるかどうかは別として、君が宮付きの女官になれた、そのお祝いがしたい。」
「お祝い? そんな必要は……。」
「良いんだ。もう買ってしまったから。」


そう言って席を立ち、彼は手の平に収まるくらいの小さな紙袋を持って戻ってきた。
促されるまま、差し出された紙袋を受け取ると、予想外にズッシリとした重みを感じて、驚く。
開いた紙袋から出てきた物には、以前に何処かで見覚えがあるような……。


「これ……。」
「あの時、欲しいと言っていただろう?」


獅子宮での研修の時。
二人で市街に買物に出た際、通りに出ていた露店で売られていた、可愛い星形のシルバーペンダント。
一目で気に入ったのだけど、少しだけ値が張ったので、その時は諦めてしまった。
彼はそれを覚えていてくれたのだ。


「あ、ありがとうございます、アイオリア様。大切にします、ね。」
「これでアレックスの中で、俺の株が上がって、君がこの宮を選んでくれたなら嬉しいのだがな。」


パクリとチキンに噛り付いて、それから、ニコリと笑うアイオリア様。
その子供っぽい笑顔が、とても可愛いと思った。



彼がくれたもの、それは
銀のペンダント



‐end‐





リアは凛々しくて格好良いのに、家事全般は苦手とする典型的な男性だったら可愛いなという妄想ですw
料理もお掃除も上手く出来ない様子を見て、ついつい何でもやって上げたくなっちゃうような。
私がいないと駄目なんだからと、女の子が放っておけなくなるタイプでw

2014.08.12

→???


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