「兎に角、アレックスは少し自覚を持った方が良いよ。自分が美人なんだという事をね。じゃないと、シュラのいない隙に、どんな男が言い寄ってくるか分からないから。自覚のないアレックスは隙だらけで、危ないなんてモンじゃない。」
「ロスにぃ?」


目を丸くして見返した私の頭を、アイオロスはポンポンと軽く叩くように撫でた。
結い上げた髪が崩れないように、そっと。


「流石に聖域内でそんな大それた事をするヤツはいないが、外ではどうか分からないからな。シュラが怖〜い人だと知らずに、アレックスに声を掛けてくる男だっているだろうしね。」
「ロスにぃ……。」


そして、悪戯な笑顔とウインク。
思わず小さな笑いを零してしまった私が横のシュラを見上げれば、彼は酷く渋い顔をしていた。


「良し。それじゃあ、パーティー会場へ行こうか。」
「……はい。」


そう言って、背を向けドアへと向かうアイオロスに続き、私達も足を進める。
だが、部屋の外に出る一歩手前で、腰に回ったままのシュラの手にグッと力が入り、更に身体を密着させられたのが分かった。


「……シュラ?」
「先程の言葉は冗談ではないからな。油断していたら、何処の誰が声を掛けてくるかも分からん。それ程、今日のアレックスは特別に魅惑的だ。」


前を歩くアイオロスに聞こえないよう、耳元に囁くシュラ。
頬を染めて俯いた私は、交互に進む自分の足を見ながら、「ありがとう。」と小さく呟く。
だが、直ぐに顔を上げ少し背伸びした私は、シュラの耳元に同じように囁いた。


「シュラも今日は特別に素敵。でも……。」
「でも?」
「シュラは黄金聖衣を着ている時が、一番素敵。」


ピタリと足を止め、驚いて目を見開くシュラに、私は満面の笑顔を投げ掛ける。
それを受けて、シュラの顔にも柔らかな笑みが浮かんだ。


「最高の褒め言葉だ、アレックス。ありがとう。」
「どういたしまして。」


お互いの頬に軽いキスを贈り合って、私達は再び足を進めた。
直ぐそこまで近付いたパーティー会場から漏れ聞こえる、微かなざわめき。
胸の鼓動が早まる。


私はちゃんとアイオリアと話が出来るだろうか?
ちゃんと仲直り出来るだろうか?


会場の入口を前に、私は大きく息を吸い込んだ。



→第8話へ続く


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