6.作戦会議



その日の昼。
仲良くしている天蠍宮の女官の子が、フェタチーズをお裾分けしてくれたので、早速、お昼ご飯に頂こうと、私はキッチンに立っていた。
程良く千切ったレタスの上に、スライストマトと角切りのフェタチーズ、そして、オリーブを散らして……。


「美味そうだな。ホリアティキサラダか?」
「っ?!」


突然、背後から響いた声。
あまりに吃驚したせいか、ビクッと身体を弾ませた私は、驚きの声すら上げられなかった。
そんな私を、背後からニュッと伸びた長くて逞しい腕が、ガッチリと抱き締める。
漸く頭が回り出した私が、首を傾けて自分を背後から抱き締めている人物を確かめれば、やはりと言うか、それはシュラだった。


「シュラ?! 今日は後輩指南の当番の日じゃなかったの?」
「午前中で終わったから、帰ってきた。」


満足気に髪に顔を埋め、ジタバタする私を腕の力に物を言わせてギュッと腕に閉じ込めて。
こうなったら、どんなに暴れようと無駄な抵抗であるだけ。
私はあっさりと諦めて、背後から支えるシュラに体重を預けた。


「新鮮で美味しそうなチーズでしょ。お裾分けしてもらったの。」
「磨羯宮に山羊のチーズを持ってくるとは、嫌がらせか?」
「もうっ。そんな事、ある訳ないでしょ。」


腕の力を一向に緩めようとしないシュラに抱き締められたまま、私は再び手を動かし始めた。
多少は邪魔だったけど、サラダくらいならこのままでも何とか。
ムサカはオーブンの中で出来上がっているし……。


「フッ、冗談だ。」
「シュラ……。」


フッと小さな笑いを零して頬にキスを落としてくるシュラ。
私は横を向いて、その唇に自分の唇を重ねた。
でも、この体勢だもの。
私としては軽いキスだけで済ませるつもりだったのに。
後ろから抱き締めるシュラは、回した腕で私の顎を問答無用に固定して、無理矢理に深い口付けを続けようとする。
横を向いたままの不自然な姿勢では、流石にディープキスを続けるのはキツい。
私は押さえるシュラの腕をバシバシと叩いて苦しさを訴えた。


「ふ、はぁ……。シュラ……。苦し……。」
「我慢しろ。」


ふと気付くと、空いたもう一方のシュラの手が、私のエプロンの紐を解き、鷲掴みにして強引に剥ぎ取ろうとしている。
抵抗しようにも出来る体勢でも状態でもなく、何度か力が入った感覚がした後、私のエプロンは剥ぎ取られてしまった。
マズいわ……。


どうやら胸の奥に火が点いて一人で勝手に盛り上がってしまったシュラは、今にも押し倒してきそうな勢いだ。
このままではランチどころではなくなる。
いくらシュラを愛しているからといって、ここまで好き放題されてばかりはいられない。
そう思って、羽交い締めにされた身体で暴れようともがいた。
その時だった。





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