「おーおー。昼間っから見せ付けてくれるぜ。このバカップルはよぉ。」


キッチンの入口方向から聞こえてきた声に、二人同時にビクッと飛び上がった。
振り返れば、そこにはニヤニヤと笑ったデスマスクさんがいて、入口の横の壁に凭れ、こちらを眺めている。
慌ててシュラを払い退け、離れようとした私だったが、そんな抵抗もあっさりと押さえ込んで、シュラはワザと見せ付けるように私をギュッと抱き締めた。


「人の宮に勝手に入り込んで、何をしている、デスマスク?」


今にも聖剣乱舞を繰り出しそうな程、冷ややかなシュラの声。
これは怒っている時の声だと気付き、腕の中から彼を見上げれば、視線だけで相手を射殺せるだろう鋭い瞳で、デスマスクさんを睨み付けていた。


「良いトコで邪魔されたからって、ンな怒んなよ。このエロ絶倫山羊が。真っ昼間っから、こんなトコで盛ってる万年発情期なオマエが悪い。」


ワザと挑発するようにニヤリと笑って言い放つデスマスクさん。
シュラは今にも手刀を構えそうな勢いだ。


「蟹が、負け惜しみか? 自分に恋人がいないからといって僻むな。」
「うっせーよ。俺は特定の女とは付き合わねぇ主義なンでね。一人の女に縛られンのなンて、まっぴらゴメンだ。それよか、良い話を持ってきてやったンだぜ? 俺にもランチ食わせろや。」


デスマスクさんは、シュラの鋭い視線に臆するどころかサラリと受け流し、ふてぶてしくランチの要求までしてくる。
そんな彼を暫く黙って睨み続けた後、シュラは小さく諦めの溜息を吐いて目を逸らした。


「アレックス、コイツの分も用意出来るか?」
「え、あ、ランチ? うん、大丈夫だけど。」
「なら、頼む。」


そう言って、やっと私を腕の中から解放し、キッチンの入口へと向かうシュラ。
デスマスクさんの横を擦れ違い際に、再び鋭い視線で睨み付けるように視線を送る。


「この代金は高く付くぞ。良いのか?」
「分かってるっつの。見合うだけの話を持ってきたンだからよ。」


二人、連れ立ってキッチンを出て行く姿を、私はただ呆然と見送っていた。





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