「……ね、シュラ。」
「ん?」
「初めてキスした時の事、覚えている?」


シュラがフッと笑ったのが、触れる頬の感触で分かる。
私の腰を支えていたシュラの手が、背骨を辿りながら上へと進み、ゾクリと感じた背中が反ると、満足気にうなじから髪の中へと手を差し入れてきた。


「忘れようにも忘れられんな。アレは衝撃的だった。」
「シュラ……。」


掠れた私の声にニヤリと笑うと、首から頭を何度も撫で上げて。
ぞわりぞわり、痺れが増していく。


「なにせ四歳になったかならないかの子供に飛び付かれてキスされるなど、夢にも思ってなかったからな。俺のファーストキスはアレックスに奪われたんだぞ。」
「私だってファーストキスだったのよ。」


ホンの少し身体を離して、私をジッと見つめる。
奥深くに光を湛えた、宝玉のような黒い瞳。


「当たり前だ。アレックスにキスした奴が、俺以外にいようものなら、今直ぐ叩き斬ってくれる。」
「……それは駄目よ。」


そんな真顔で言われたら、物騒な言葉でさえも熱い愛情表現に聞こえてしまう不思議。
蕩けて力の入らなくなった身体は、崩れ落ちるみたいにシュラへと全体重を預ける。
彼とのキスがあまりに心地良かったから、ほわりと身体が浮かび上がって、意識が何処かへ飛んで行きそうだ。


「……アレックス?」
「ん、シュラ。も、眠たく、なってきた……。」
「もう、寝るか? 寝室まで運んでやるぞ。」


シュラが私の足と背中に手を回して抱え、グッと力が入る感触が伝わる。
とっさに私は腕を突っ張って、それを阻止した。


「アレックス?」
「や……。だってシュラ、直ぐには寝かせてくれないでしょう?」


このままベッドに連れて行かれたら、眠るどころか、ハードで執拗な運動に付き合わされるのは間違いない。
分かっているから小さく抵抗してみれば、シュラは苦笑いを浮かべて私を見下ろした。


「まぁ、そうだが……。」
「だったら、ヤだ。ココにいる。」


私を抱えたまま見下ろしていたシュラは、クイッと片眉を上げた後、何故か口元にニヤリと妖しい笑みを浮かべてみせる。
その笑みにちょっと、いや、かなり嫌な予感を覚えて、私はシュラから離れるように身を引いた。
が、抱き締める彼の力はビクともしなくて、容赦なく腕の中へと引き寄せてくる。


「そうか、ココが良いのか。ベッドに比べれば格段に狭いが、まぁ、俺はアレックスとならば、場所は問わんぞ。偶にはソファーの上で、というのも悪くない。」
「っ?! シュラッ?!」


あの妖しげな笑みは、そういう意味だったのね!
熱っぽい視線も、強く引き寄せる腕の力も、触れる肌の熱さも。
彼の全てが、ただ私を求めている。


「どうする、アレックス?」
「……もうっ。」


どうするって、どちらにしても逃れられないのなら、広く柔らかなベッドの方が良いに決まっている。
溜息を吐きつつ観念した私を、シュラは満足気に抱え上げた。





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