4.たった一つの同じ想い



その夜。
入浴後のボンヤリとした意識のまま、ソファーの上で膝を抱えて座っていた私は、ジッと窓の方を見つめていた。
視界には、その窓の前で暗い外を眺めている、同じく入浴後の火照った身体をバスローブで覆ったシュラの姿。
濡れた黒髪がヤケに色っぽく見える……。
もう何年も見続けている筈なのに、彼のそんな姿に未だに胸が高鳴るなんて。
濡れた髪を掻き上げながら振り返ったシュラが、私の視線に気付いてゆっくりと近寄ってきた。


「どうした、アレックス? ボンヤリして。」


私の横に座ったシュラが、極自然に肩を抱き寄せた。
傾いた私の身体は、彼の腕の中、いつもの定位置にすっぽりと収まる。


「ん、もう眠たくなってきたなって、思っていたトコ。」
「その割には、ジッと俺の事を見ていたな?」


シュラに隠し事は出来ない。
私の考えなど、彼は何でも全てお見通しだ。
そっと前髪を掻き上げ、ワザと音がするように、シュラはチュッと額にキスを落とした。
そんな彼の首に腕を回して、お返しとばかりに頬にキスをすれば、私の肩にあった手が腰に滑り落ち、より強く引き寄せられる。


「シュラは何でそんなに色っぽいのかと、そう思っていたのよ。」
「そんな事、俺にも分からん。」


二人の身体の密着度は増し、隙間もないくらいにピッタリとくっ付き合って。
顔と顔の距離は、僅か数センチ。
触れるか触れないかのギリギリな距離。
バスローブから覗いた私の足は、自然とシュラの足に絡み付く。
そんな僅か数センチの距離に、先に焦れたのは私の方だった。


「……ね、キスしてくれないの?」
「今、しただろう?」
「額じゃなくて、唇によ。シュラ。」


目が寄る程の至近距離で、二人、ジッと見つめ合って。
シュラが見せた、いつものはにかんだ小さな笑みに、私の胸はまた高鳴ってしまう。


「今夜のアレックスは、我が儘なお姫様だな。」
「んっ……。」


そして、やっと重なった唇は、蕩けてしまいそうな程、熱く情熱的に燃え上がった。
酸素不足で苦しくなっても、なかなか唇を離す事が出来なくて。
少し唇が離れれば、僅かな呼吸の後に、また直ぐに引き寄せられる。
何度も何度もそれを繰り返し、結局、苦しさに堪え切れなくなった私は、唇が離れた隙にシュラの頬に自分の頬を滑らせて、彼の執拗なキスから逃れた。





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