スキと言ってください



「何故に俺がアレックスに対して、ンな事、言わなきゃなンねぇンだよ?」
「勿論、御褒美ですよ、御褒美!」
「……はぁ?」


ホテルの一室。
任務であるパーティーへの潜入も無事に終えて、デスマスク様は脱いだタキシードの上着をベッドの上に放り投げた。
それを皺にならぬようにとハンガーに掛ける私の横で、彼は蝶ネクタイを放り、靴を脱ぎ棄て、今はシャツのボタンを半分ほど、引き千切りそうな勢いで外している。
どうぞ、もっとやってください。
いっそ、全部、脱いじゃってください。


「なンの御褒美だよ?」
「ちゃんと任務をこなした御褒美です。私、目立たなかったですよね?」


デスマスク様の念押しに従い、目立たず、大人しく、そして、絶対に変態を表に出す事なく、場に溶け込む。
それだけではない。
相手に気取られぬよう、怪しまれぬよう、それとなく話を聞いて回り、出来る限りの情報収集までやってみせた。
これで私が、どれだけ有能で優秀なのか、理解出来たでしょう、デスマスク様。


「まぁ、確かにアレックスの仕事振りは優秀ではあったな。他の女官だったら、ただニコニコして立ってるだけだっただろうし。」
「でしょう? こう見えても私、仕事が出来る女なのです。」
「自分で言うかよ、それを……。」


ベッドの上に座り込み、呆れ顔でジロリと私を見遣るデスマスク様は、いつもの銀髪・紅目の容貌ではなく、黒い髪に黒い瞳をしている。
任務の際に目立たないようにと、髪を染め、カラーコンタクトを入れて、地味な見た目に変えたのだが。
黒髪・黒目のデスマスク様も、普段とは違う妖しさに溢れて、非常にセクシーですね。
今直ぐにでも押し倒したいです。


「押し倒すのはヤメロ。部屋に戻った瞬間から、変態全開になンのもヤメロ。」
「あ、声に出てましたか? スミマセン。」
「つか、なンで俺とアレックスが同じ部屋なンだよ。別々の部屋じゃねぇのか?」


だって、デスマスク様と私はカップルの設定で、今夜のパーティーに潜り込んだのですよ。
それが、別々の部屋に泊まってるなんてバレたら、大問題でしょう。
嫌だろうと何だろうと、今夜は一緒の部屋に泊まるしかないのです。
そして、私に押し倒されて、美味しく頂かれるしかないのです。


「好きとか何とか以前に、ソッチが御褒美なンじゃねぇのか……。」
「いえいえ、デスマスク様への夜這いは日課ですから。御褒美ではありません。」
「はぁ?! 夜這いが日課とか、オマエ、頭おかし過ぎンだろ?! つか、なンで、この部屋、ダブルなンだよ?! ツインじゃねぇのかよ?!」
「だって、ツインじゃハッスル出来ないじゃないですか? やっぱりベッドは広くなきゃ駄目です。」
「いい加減にしろよ、変態!」


はぁ……、黒髪を掻き乱して怒るデスマスク様も、ゾクゾクするほど素敵ですね……。
もう好きとか言ってもらう事など、どうでもイイんで、押し倒しちゃっても良いですか?
良いですよね?
今夜は目一杯、ハッスルしちゃいますよ。
勿論、デスマスク様もたっぷり楽しめるように。



‐end‐





間が開き捲っててスミマセン(大汗)
蟹さまと変態夢主さんの攻防戦は、書くだけでも多大なる精神力を使うので(苦笑)、なかなか筆が進まずにいました。
そんなこんなで夢主さんの変態っぷりが、更にグレードアップしてます。
ホント、色々とスミマセン(滝汗)

2022.03.20



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