と一緒



窓の外に広がる真っ青な空。
暖かく気持ちの良い風が吹く六月の朝。
食卓にはクロワッサン、じゃなくて、イタリアではコルネットと呼ぶパリパリふわふわもっちりのパンに、それに塗る杏ジャム、蜂蜜、カスタードクリーム。
その横には三種のビスケットにプレーンヨーグルト、そして、朝食定番のカプチーノと、搾り立てのフレッシュオレンジジュース。
イタリア式の甘い甘い朝食を綺麗に並べ終えると、私は朝寝坊の宮主様を起こしに彼の部屋に向かった。


しかし、彼の寝室に辿り着く前に目に留まったのは、とあるドアの前でミャーミャーと鳴き声を上げる猫ちゃん二匹。
雌猫のマス代とスマ子がチョコンと座ったドアの奥からは、シャワーの水音が聞こえていた。
そうですか、ちゃんと自分で起きて、朝のシャワー中でしたか。
などと思っている間にシャワーが止まり、当の宮主様がドアを開けて出て来たのだが……。


「ミャーン!」
「ミャー!」
「おっ? なンだ、オマエ等? 待ち伏せか?」
「ミャーン。」


大好きなデスマスク様が現れた瞬間、嬉しさ全開で雌猫ちゃん達が飛び掛かる。
が、彼の方は腰にバスタオルを巻いただけの姿。
左右から飛び掛かる猫ちゃんの爪がタオルに引っ掛かって引っ張られ、ハラリと合わせ目が解けてズリ落ちそうに……。


「わぁっ?! わーわー!」
「ンだよ、このエロ猫共が。そンなに俺を脱がしてぇってのか? つーか、アレックス。なンで、そンなトコに突っ立って、背ぇ向けてンだ?」
「で、デスマスク様を起こしに来たんです。そ、そしたら、そのような危険な格好で……。」
「文句ならマス代とスマ子に言えよ。コイツ等が俺を裸に引ン剥いたンだからな。」


もう振り向いても大丈夫だぜと声を掛けられ、恐る恐る振り返る。
しっかりとバスタオルを巻き直したデスマスク様は、両手に猫ちゃん達を抱え上げて、右頬に左頬にとスリスリ頬擦りしては、うっとりと目を細めた。
何でしょうね、これ。
もう恋人とか出来なくても、十分に幸せなんじゃないでしょうか、この御方は。


「朝食の準備が出来てます。早く着替えてください。」
「へいへい。」
「猫ちゃん達との戯れは、後からにしてください。」
「へーい。」


気のない返事に溜息を吐いていると、バタバタと廊下を駆けて来る足音と、ミャーという鳴き声が響いてきた。
あっと思った時には、もう遅く、飛び掛かり隊の第二陣、雄猫の蟹之介と蟹五郎がピョーンと飛んで来ていて。
両手の塞がったデスマスク様の、腰のタオルを見事に引き摺り下ろしたのだった。





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