「邪魔をするぞ、アレックス。」
「アイオリア様、こんにちは。」
「聖衣の修復が終わったと聞いて、取りに来たのだが。」


あれから数日後。
暖かな午後に、この白羊宮を訪れたアイオリア様を、ムウ様の作業部屋へと案内する。
修復作業中のムウ様はというと、チラと一瞬だけ振り返ったものの手を止める事はなく、「そこに出来ていますよ。」と、素っ気ない一言だけをアイオリア様に投げた。


「…………。」
「アイオリア様?」
「……これは?」
「どうしましたか、アイオリア? 聖衣ならば綺麗に直っているでしょう。欠けた箇所も、折れた箇所も元通りにした筈ですが。」


修復済みの聖衣の前に立ちはだかるアイオリア様の背が、ワナワナ震えているように見えるのですが、気のせいでしょうか?
聖衣に何か変なところでもあるのかしらと思ったのだが、アイオリア様の大きな背中で隠れていて、私からは良く見えない。
精々、獅子のたてがみがチラと見える程度で……、って、あれ?
聖衣がそのまま剥き出しで置いてある?
パンドラ箱の中に入っていないの?


「あれは……、何だ?」
「あれとは? あぁ、猫ですよ。我が家に同居している猫です。」


アイオリア様が震える指で示したのは、獅子座の聖衣の背中でスヤスヤと眠っている猫ちゃんだった。
わわっ?!
あの子、姿が見えないと思ったら、こんなところに居たなんて!
しかも、アイオリア様の大事な聖衣の上でお昼寝しているだなんて!


「猫なのは見れば分かる。」
「もしかして種類を聞いてますか? 珍しい柄ですからね。あれはベンガルです。豹柄なのですよ、可愛いでしょう。」
「そうではない! 猫とか、ベンガルとか関係なく、何故、俺の聖衣の上で、猫が寝ているのかと聞いているんだ!」


あああ、大変だわ!
アイオリア様がお怒りに!
だ、だから、作業部屋に入ってはいけない事を、ちゃんと躾しておかないと駄目だって、何度も言ったのに……。


「何故と問われても、私はあの子じゃないので分かりませんが、多分、安心するのでしょうね。」
「……は?」
「同じ猫科ですから、安心するのですよ。大きな獅子座の聖衣の傍にいると、母親に守られている気分になるのではないでしょうか。」


アイオリア様の身体が固まっちゃったわ。
それは、そうでしょうね。
自分の聖衣が、まさか猫ちゃんの母親代わりになっているだなんて、想像外も良いところですもの。
でも、噂に聞いた話では、アイオリア様が飼われている猫ちゃんも、頻繁に獅子座聖衣に寄り添って眠っているとか……。


「そ、それはっ……!」
「うちの子だけではないのですね。猫は皆、この聖衣が大好きだと。良かったですね、アイオリア。」
「い、良い事など何もない!」
「そうでしょうか?」


ムウ様は聖衣の背で眠っていた猫ちゃんを抱き上げると、御自分で一度、スリスリ頬擦りしてから、アイオリア様の腕の中にギュッと押し込んだ。
パシパシと数度、瞬きを繰り返す猫ちゃん。
だが、大きな身体のアイオリア様にも怯える事なく、その胸に顔を擦り付けると、「ミャーン。」と嬉しそうに鳴き声を上げたのだった。



と暮らす日々
猫はやっぱり猫が好き?



(その子、時々、獅子宮に遊びに行くかもしれません。)
(……は?)
(マーキングしてましたからね、獅子座聖衣に。)
(な、何っ? マーキングだとっ?!)



‐end‐





獅子座聖衣に群がって、ポカポカお昼寝する猫ちゃん達の姿を想像したら萌えましたw
きっと巨蟹宮の蟹之介くんとかも、獅子座聖衣に会いに行ってますよw

2018.03.18



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