と一緒



窓から差し込む日光が、頬に暖かい。
少し前から目が覚めていたけれど、その暖かな心地良さに身を委ね、目を閉じたままでいる私。
それに身体も酷くダルい事だし。
だけど、先程から優しく頭を撫でている大きな手の感触に、そろそろ起きなければならないだろうかと思い始める。
そうしないと、昨夜の名残を色濃く残す彼の唇が、頬に顔にと満遍なく降ってくるのを知っているから……。


――ペロッ。


「ひゃっ?!」
「お? 起きたか、アレックス?」


な、な、何?
何ですか、今のは?
慌てて飛び起きれば、私が寝ていた枕の横で、切れ長の目を真ん丸に見開いた猫ちゃんが、首を小さく傾げて私を見上げていた。
フワフワな金茶の毛を揺らす猫ちゃんは、この天蠍宮で飼っている仔猫だ。
この子に頬を舐められたのだと気付くまで数秒。
真横から響いたミロ様の笑い声が、この耳に届く瞬間までの事。


「ハハハッ。朝から猫に翻弄されてるとはな。情けないぞ、アレックス。」
「ミャーン。」


からかうように笑う彼と、猫ちゃんの鳴き声の見事な調和に、私は唇を尖らせて不貞腐れるしか出来ない。
それにミロ様に至っては、燦々と差し込む朝日の中に、その立派な身体を惜しげもなく晒し、眩しい光に負けない笑顔を満面に零している。
正直、恥ずかしくて、照れ臭くて、その姿を真っ直ぐには見ていられない……。


「お、何だ? 今更、照れてるのか? もう恥ずかしがるような間柄でもないだろうに。」 
「ですが、その……。こんなにも明るいところで見るには、少し刺激的過ぎるお姿かと……。」
「……そうか?」


せめてシーツをお臍の上くらいまでは引き上げて欲しい。
今のままでは、少し身動ぎしただけでも危険極まりない状態だもの。
というか、ミロ様へと向き直った仔猫が、彼の腹筋を目掛けて擦り寄り始める仕草が、今にもシーツの際どい縁に引っ掛かりそうになっている。
私は危険を感じて、猫ちゃんを抱っこし、ミロ様から引き離した。
勿論、猫ちゃんは怒って暴れ始める。


「イイじゃん、見えたって。そう気にするなよ、アレックス。」
「気にします。こんな明るい時間に、そんな破廉恥な……。」
「じゃあさ。今から、もう一回シよう。そしたら、見えても問題ないだろ。」
「も、問題ありますっ! 大ありですっ!」


私は仔猫を一層、強く抱き締め、シーツを引き寄せて自分の身体を首筋まで隠した。
今から、もう一回だなんて、既に朝も良い時間なのに!
そんな色事に時間を潰している場合じゃないのよ、私には天蠍宮の女官としてやらなければならない仕事が沢山あるのだから。
ミロ様の朝食の準備とか、ミロ様が執務に出掛けるための用意とか。


「そんなもの、朝メシくらい抜いたって、別に平気だって。死にはしないさ。」
「駄目です。ミロ様の健康を管理する事も、私の仕事の一つ。女官の私が付いていながら、朝食を抜いたなどと教皇様に知れたら、怒られるのは私なのですから。」
「相変わらずクソ真面目だなぁ、アレックス。」


真面目でも、クソ真面目でも結構。
だが、ベッドの上、ジリジリと距離を詰めてくる野獣の如きミロ様が、一ミリも諦めていないと悟った私は、腕の中に無理矢理に閉じ込めていた仔猫を、にじり寄るミロ様に向かってパッと放した。


「ほら、御主人様に可愛がってもらいなさい。」
「ミャーン!」
「わっ?! コラ、擽ったい! 止めろ、離れろって!」


猫ちゃんがミロ様の脇腹に突進して、スリスリ攻撃を放っている隙に、ベッドから抜け出した私。
彼が仔猫の執拗な攻撃を撃破する前に、急いで衣服を身に着ける。
そして、安堵の溜息を零しながら、何とか無事に寝室を脱出したのだった。



と暮らす日々
朝の誘惑撃退方法



(天蠍宮の女官なら、もっと俺を立てるべきじゃないのか、アレックス? てか、恋人なら、あれくらいの甘いムードは受け入れるべきだろ!)
(それとこれとは話が別です。ほら、人参も残さずに全部、食べてくださいね、ミロ様。)
(人参……、うえぇ。)



‐end‐





ミロ誕なので、ミロたんと猫ちゃんとラブコメでも。
などと思って、色々と微妙になりました、すみません^^;
何はともあれ、お誕生日おめでとう、ミロたん!

2015.11.08



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