「格好付けてないで、ハッキリ仰ってくだされば良かったですのに。」
「あ? 何をだよ?」
「猫ちゃん、飼いたいのでしょう?」


知っているの、デスマスク様が実は大の猫好きだって事。
でも、飼いたいと言ったら私が良い顔をしないと分かっているから、色々と名目を付けては頻繁に磨羯宮に足を運んでいる。
磨羯宮でミーティングだとか、磨羯宮で飲んでくるとか。
あくまでそれは上辺の理由で、本当は猫御殿と化している磨羯宮へと、沢山の猫ちゃん達と心行くまで戯れるために出向いているの。


「でも、それだけじゃ、やっぱり満たされなくなってしまったのでしょう? それで仕方なくを装って、巨蟹宮に連れ帰ってきた、と。でも、四匹はちょっと大過ぎでしたね。一匹だけなら、上手く私を騙す事が出来たかもしれないですけど。」
「煩ぇよ。選べなかったンだから、しゃあねぇだろが。」


モソモソと起き上がったデスマスク様は、チッと舌打ちしてから、銀の髪を掻き毟った。
近くで丸まっていた猫ちゃん達も、彼が起き上がったのを合図に、ワラワラと集まってくる。
本当に良く懐いているのね。
我先にとデスマスク様の身体に擦り寄ったり、膝に飛び乗ったりしてくる猫ちゃん達を払い除けもせず、その内の一匹を愛おしそうに抱っこする姿は、何と言えば良いのだろう。
見慣れない口元の緩んだ表情に、下手に睨まれるよりも、ずっと不気味に思えてしまう。
普段が余りに強面で、その……、悪人顔が板に着いているから。


「で、どの子が一番のお気に入りなんです? その白猫ちゃんですか?」


抱っこした挙げ句に、頬擦りスリスリまでしている白猫ちゃんは、誰が見ても美人(美猫?)だ。
彼の膝の上にいる灰色の猫ちゃんは、スッと真っ直ぐな背筋とピンと尖った耳が綺麗。
他の二匹も目がクリクリと愛らしくて、擦り寄る仕草は、とても人懐っこい。


「だから、選べねぇっつったろが。気に入ってるヤツ、全部、連れてきて、ココを嫌がって逃げ出すのがいたなら、残りのヤツだけでも……、なンて思ってたンだがな。」
「結局、どの子も居座ってくれちゃった訳ですね。」


深い深い溜息。
別に猫ちゃんが嫌だって事じゃない。
私だって好きですよ、だって、こんなにも愛らしいのだもの。
でも、愛らしいだけがペットではない。
餌やトイレのお世話、シャンプーやブラッシング、爪切りまで、面倒なお世話は山ほど有る訳で。
それ等の全てを、この横暴極まりない宮主がこなしてくれる筈もなく、デスマスク様の抱える面倒事は、漏れなく全て私の面倒事になるという仕組みなのだ。


「なら、こうするか。」
「え?」


ズイッと差し出された灰色の猫ちゃんを反射的に受け取り、私はポカンと彼の顔を見るばかり。
オマエはソイツ、俺は残り全部、なんて言われても、何の事やらサッパリ分からない。


「だから、アレックスが世話すンのは、その一匹だけでイイって事だ。残りの三匹は俺がする。」
「で、出来るんですか? デスマスク様に?」
「出来なきゃ、磨羯宮に逆戻りでイイぜ。あ、ただし任務でいない時以外な。」


つまりは、デスマスク様が任務の時には、四匹全部のお世話を私がしなきゃいけないって事ですよね!
それって殆どじゃないですか、殆ど!


「ミャーン!」
「わっ! 擽ったい!」
「おー、イイぞ。もっとやれ。」


抱っこした猫ちゃんからの強烈な胸元スリスリ攻撃に、色んな意味で悶絶する私。
結局は私も、この可愛らしい猫ちゃん達に絆(ホダ)されてしまったようです……。



と暮らす日々
女の子よりニャンコの子



(デスマスク様、彼女なんて出来なくても良いのじゃないですか?)
(ぁあ? なンでだよ、アレックス?)
(だって猫ちゃんと戯れているだけで、十分に幸せそうなのですもの。)



‐end‐





猫と暮らすシリーズ第6弾、デス様編。
本当はおシャカ様にしようかと思ってネタを練っていたのですが、蟹誕も近付いている事だしと、デス様にしてみました。

2014.06.15



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