「あ、あの……。さっき浴槽の掃除をしようと思ったら電気が点かなくて、それで……。」
「だったら、俺が戻ってきてから頼めば良いものを。一人でこんな危なっかしい事をして、落ちて怪我をしたら、どうするんだ?」


そう言いながら、アイオロスはアシュを腕に抱えたまま歩き出した。
浴室を出て、リビングへと向かおうとするアイオロスの腕の中で、流石にアシュも焦ってもがく。
自分で歩けるから降ろしてと言い張る彼女を軽く無視して、アイオロスは彼女を腕に抱いたまま進んだ。


「もう大丈夫よ。心配性なんだから、ロスにぃは。私が身軽だって事、知っているでしょ? 昔は木登りだって得意だったんだから。」
「それは子供の頃の話だろう? 今と昔じゃ身体の作りが違うって事、分かってないのか? 今のアシュの身体じゃ、木登りなんて出来ないだろ。」
「それは……。確かに、もうずっと登ってはいないけど……。」


僅かに頬を膨らましてむくれた様子のアシュを、苦笑いを浮かべて見下ろすアイオロスの腕の中。
その両腕にズッシリと感じるのは、大人の女性として豊かに実った重みだ。
子供の頃、何度となく抱き上げたり、おんぶをしたりしたアシュの小さな身体。
霞のように軽かった、あの頃のアシュとは明らかに違う。


緩やかなドレープを描きながら大きく開いた女官服の胸元、そこから覗くクッキリとした谷間と、服を押し上げて膨らむ豊かな二つの隆起は、大層、重たげで。
ウエストのラインはキュッと細く引き締まり、そこから続く左右に張り出した腰のしなやかな線と、こちらも柔らかで豊かなヒップの隆起。
ピッタリと身体に沿ったマーメイドラインの裾の長い女官服は、アシュの女性的で魅惑的なスタイルを、これでもかと強調し、彼女の姿態の美しさを存分に引き出している。


僅かに視線を落とせば、そこには呼吸する度に上下する豊かな彼女の胸元が目に入り、アイオロスの喉が無意識にゴクリと鳴った。
そんなアイオロスの熱い視線に気付き、既に赤く染まっていた頬を、更に真っ赤に染めるアシュ。
アイオロスの腕の中、恥ずかしそうに身を縮めて、彼の服の胸元をキュッと握り締めるその仕草も、何とも言えず愛らしい。


「あ、あの……。ロス、にぃ?」
「あ、あぁ、すまない。」


腕の中に感じる重みだけで、アシュが成熟した『大人の女性』なのだと、勝手に反応してしまう自分の身体。
頭では昔と変わらないのだと言い聞かせていても、こうして視覚や触覚、その他の五感が自分の意識よりも先に彼女を『女』と認識し、深い『欲望』を感じてしまうのだ。
彼女を欲しいと思う気持ちは、時に理性を越えてしまいそうで、アイオロスはそれを抑えるのに必死だった。


子供の頃は、抱き上げようが何をしようが、当たり前に欲望など感じた事などなかったのに。
それはアシュが大人になった事に加えて、自分の身体も大人になってしまったからだろう。
アシュを一人の女性として欲し、彼女の全てを感じ取りたいと思う欲求が、日に日に増していく。
こうして身体が触れ合えば、その欲求が暴走しかねない程に強く。





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