「違うわ。逃げたりなんかしない。誤解なの……。」
「……。」
「逃げる必要なんてない。だって……、私もずっとアイオリア様の事だけを想っていたから。貴方をずっと愛していたから……。」


精一杯の気持ちを伝えれば、今からでも、きっと遅くはない。
彼だって、こんな事は望んでいない筈。
ならば、正面から向き合い、しっかりとお互いの気持ちを伝え合い、受け止める事が出来れば。
その時には、何の障害もなく、二人の恋を成就出来る。
アシュリルはそう信じて、言葉を紡いだ。


だが、現実はいつだって上手くはいかないもの。
時に酷く残酷で、心をズタズタに引き裂き、痛みと悲しみばかりを突き付けてくる。


「そのような言葉で、俺を丸め込もうというのか? そうして俺が油断した隙に、ココから逃げようとでも?」
「っ?!」
「残念だが、その手には引っ掛からん。俺はアシュリルを逃すつもりは毛頭ないし、この決意も変わりはしない。」
「違うっ! そうじゃない、本当に――、あ、ああっ!」


アイオリアの心は頑なだった。
心からの想いを籠めたアシュリルの言葉でさえ聞き入れられない程に、彼は全てを拒否していた。
何一つ受け入れない。
ただ奪うだけの野獣と化していた。


「あっ! は、だ、駄目っ! や、そこはっ……!」
「ココか? ココが良いのか?」
「や! あ、ああっ! はあっ! あ、あっ……。」


数度の交わりで、既に痛みを克服して、深い快感を覚え始めたアシュリルの身体の内側をじっくりと探るアイオリア。
その熱い指先と性急な愛撫は、決して自分から逃れる事は出来ないのだという、無言の訴えにも似ていた。
獰猛でいながら、その端々に苦しみの表情を滲ませて、アシュリルを見下ろす黄金の獅子。
自分の手の下で艶かしい声を上げる愛しい女の痴態に、自然と息が上がり、熱い吐息が漏れる。


「あっあっ! ん、はぁはぁ……。あ! あ、やぁっ!」
「嫌じゃないだろう?」
「や、いやっ! やあっ!」
「アシュリルのココは、俺を待ち侘びてる。」


視覚から伝わる艶かしい刺激に堪え切れず、アイオリアがアシュリルの長い足を割り開いた。
敏感になった部分が夜の空気に触れ、ビクリと身体が震えたのも一瞬。
直ぐにアイオリアの熱く滾った自身が押し当てられ、まだ慣れない感覚がゾワリと背中を走る。
強く首を左右に振って抵抗したが、その部分に目を奪われ、更に興奮していくアイオリアの目には、彼女の顔など目には入らなかった。
どんなに高い声で拒否されても、今は目の前に迫った熱い行為を助長するものにしかならない。


「あ、あああ! はぁ、あ、あ、ああっ!」
「くっ、アシュリル!」


ゆっくりとアイオリアが沈んでくる感覚に、アシュリルは掠れた声を上げた。
二人して、徐々に奥へと入り込み一つへと繋がっていく部分をジッと見つめながら、その都度、深まっていく波のような歓喜。
大き過ぎるくらい大きなアイオリアを全て飲み込むと、二人同時にホッと息を吐いて、身体の力を抜く。
自身の一番深いところ、自分自身ですら触れる事の出来ない場所に彼が到達した事を感じ取った刹那、アシュリルの目から細い涙の雫が零れ落ちていた。





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