闇に紛れて君を探しに



「あー、気持ち良いな、外は。」


何が何だか分からないけれど、急に空が見たくなって、宮の外に出た。
外へ出て、首が痛くなるくらい上を向いて星を見上げていたら、もっと高い場所から眺めてみたくなって、自宮の上によじ登った。


変なものだな。
宮の上に乗ろうが、セスナに乗ってココより遥かに高い上空を飛ぼうが、あの星までの距離はほとんど変わりないのに。
ちょっとだけ視点が高くなっただけで、妙な優越感を覚える自分がいる。


『……兄さん? 兄さーん? あれ? いないのか?』


途中、宮内からアイオリアが俺を探す声が聞こえたが、ココから下りてしまうのが非常に勿体ない気がして。
アイオリアには悪いが、聞こえなかった振りをして無視をしてしまった。
まぁ、小宇宙を辿れば一発で見つかってしまう、そんな場所だ。
それをしなかったという事は、大した用事でもなかったのだろう。
程なくして人馬宮から出て行ったアイオリアの背中を、俺は宮の上から見送った。


だが――。


「あれは……、アミリア、か?」


アイオリアが去って数分もしない内に、今度は別の人の姿。
残業でもしていたのだろうか、もうかなり遅い時間だというのに女性が一人、歩いていく。
今から自分の住む居住区へと帰っていくところなのだろう、アミリアはフラリと人馬宮の中へ入っていき、数分後には宮を抜けて反対側の入口から出て行った。
そして、暗闇に包まれた十二宮の階段をゆっくりと下っていく。
直ぐにも闇に飲まれて見えなくなってしまった後ろ姿が、ヤケに心に引っ掛かる。


そうだ、こんな時間、そんな風に無防備にフラフラと歩いていたら、襲ってくれと言っているようなものだ。
聖域の内部だといっても、それほど安全な訳じゃないし。
雑兵とか粗暴な男共も多い事だし。
そんな心配が心の中で繰り返されて、彼女が消えた方向から目が離せなくなる俺。


心配だな、本当に誰かに襲われてしまうぞ、アミリア。
例えば――、俺みたいな男に。


そこまで考えて、ニヤリと不敵な笑みが浮んだ。
あぁ、俺みたいな男に襲われては一溜まりもないだろうな、アミリアは。
容赦はしないし、慈悲もない。
嫌だと言われれば、余計に燃え上がってしまう。


何て悪い男だろう、俺は。
だが、そんな悪い男に目を付けられたのが、アミリアの運の尽き。
この闇に紛れて、颯爽と宮の上から飛び降りて、音も立てずに彼女を追い駆ける。
追い駆けて、捕まえて、腕を捉えて、そして――。


その後は、俺の宮の最奥で、深く濃い闇をたっぷりと満喫しようか?
勿論、衣服はいらない。
ただ、ベッドが一つあれば良い。


直ぐ目の前まで迫ったアミリアの背中。
彼女は、まだ俺に気付かない。
開いた手を伸ばす、その白い腕に向かって。
届きそうで届かない手に、俺は後一歩、思い切って前へ足を踏み出した。



ここから情熱の夜へと落ちようか?



いきなり掴まれた腕に、動きを止め、ハッと息を呑むアミリア。
振り返った彼女と目が合った刹那、そこから目眩がする程の重く熱い夜が幕を開けた。



‐end‐



→(NEXT.シュラ)


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