幾度の夜を越えても消えない証しをこの胸に



「……ん、アミリア?」


真夜中、目を覚ましたのは、腕の中で眠る彼女が大きく身動ぎをしたからだ。
暗闇の中、目を凝らして見れば、アミリアはその小さな身体を更に小さく丸めて、俺の胸の中へと蹲るようにしている。


ここ数日、急速に秋が深まり、夜は特に冷え込みが激しい。
疲れ果てて汗を掻いたまま夢の世界へと落ちてしまったから、身体が余計に冷えてしまったのかもしれないな。
無意識に擦り付けられる足先が、ドキリとする程に冷たくて、痛々しさすら感じる。


――このまま寝ていたら風邪を引いてしまうかもしれないし、疲れているアミリアには悪いが、ここはもう一回、温め合う必要が……。


などと、自分勝手に都合の良い事を考えていたからか、俺の邪(ヨコシマ)な気配を感じたアミリアが、ゆっくりと瞼を開いた。
流石に身の危険を感じたのか、まだ暗闇に慣れぬ目を擦り、何処となく寝惚けたままのアミリアを見つめ、俺は苦笑を漏らす。


「……ん。……シュラ? どうしたの?」
「何でもない。だが、アミリアを起こしてしまったな。すまない。」
「何でもない? でも、今、笑ってた。」
「アミリアの仕草が、小動物のようで可愛かったからだ。」


それは誤魔化しの言葉でありながら、本心でもあった。
小さく丸まって腕の中にスッポリと収まった彼女がみせる動きは、何とも言えず可愛らしい。
今もそう、俺の言葉に気を悪くしたのか、心持ち頬を膨らませた顔をして。
見ていて和むと言うか、心が温まる。


「シュラの身体、あったかいね。」
「そうか、こんなものだろう? アミリアの身体は、随分と冷たいな。」
「だって寒いもの、今。」


そう言って、アミリアは益々、身体を小さく丸めて、俺の身体に擦り寄った。
触れる身体の箇所、全てがヒヤリと冷たい。
俺は両手でギュッとアミリアを抱き締め、喉元で揺れる彼女の髪に顔を埋めた。
フワリと香るのは柑橘系の香り、愛しいアミリアに良く似合う、心休まる香り。


「シュラはきっと、守るものを沢山持っているから、こんなにも身体が温かいんだね。」
「ん? 守るもの? 俺が、か?」
「そう。例えばアテナ様とか、聖域とか、仲間とか、後輩とか、地上の平和とか……。あと、私、とか。」
「あぁ、そうだな。アミリアは俺が守らねば、直ぐにやられてしまいそうだ。」
「その言い方、ヒドい。」


胸の中に閉じ込めたアミリアの表情は見えないが、暗い闇の中でも彼女が大きく身動ぎしたのが感触で分かる。
俺の胸に当てていた手を、そっと腰へと回して強く抱き付いてきた。
腰と背中に触れたアミリアの指や手の冷たさに、再び心がドキリとする。


「私は……、守るものを何も持たないから、こんなに身体が冷え切ってるのかな?」
「それは、違うと思うが。」
「どうして?」
「アミリアは守られるためにココにいて、アミリアを守るために俺は強くあろうと思う。アミリアの、その冷たい身体を温めたいと願うから、俺は何度も死線を潜り抜けて、ココへ帰りたいと、そう思うんだ。」


彼女の身体が冷たいのなら、何度も何度でも俺が温めてやろう。
温まった身体が再び冷たくなったとしても、毎夜、俺がアミリアを温めてやる。
残すのは伝わる体温じゃない、温かな肌の温もりじゃない。
この心に消える事ない、彼女を『愛しい』と思う気持ち。
それをこの身体越しに、彼女へと伝えるために強く強く抱き締める。


「アミリア。」
「ん? 何、シュラ?」
「好きだ。」
「私、も……。」



交わしたキスは、胸の奥に刻んだ誓い



何度、夜を共に越えても、この温もりは直ぐに消えてなくなる。
だが、彼女への想いだけは変わらずに、この胸の奥に刻まれているから。
俺はその消えない想いを抱いて、明日も闘い続けるだろう。
腕の中の愛しい人のためにも……。



‐end‐





何だかネタが全然思い付かなかったので、お題に頼った結果、返ってグダグダな作品が出来上がったという悪い見本です(苦笑)
リアが多少純情で、デスが意外な感じで、ロス兄さんはやはりおにゃのこ好きで、シュラはERO山羊……。
非常に微妙な仕上がりですね、はい(滝汗)
次回までには、もっとマシなSSを書けるように精進したいです。

2009.10.19



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