「昼寝じゃない。おかしな事を言うな、アリナーは。」
「でも、寝てたじゃない。」
「まぁ、結果的には眠ってしまったがな。だが、初めから昼寝をしたいなら、もっと寝心地の良い場所で寝る。昼寝には最適なソファーもある事だし。」


そう言って、漸く身体を起こしたアイオリアは、リビングの真ん中にあるソファーを眺めやった。
鮮やかな黄色のソファーは、身体の大きなアイオリアが寝そべっても十分に足りる大きさがある。
彼の誕生日、私が選び、アイオロスさんがお金を出して買ったソファーだ。
アイオロスさんは「色が派手過ぎやしないか?」と言ったけれど、部屋に入れてみると、初めからそこにあったかのように、しっくりと馴染んだ。
アイオリアにも彼の部屋にも良く似合っていたし、彼自身も気に入ってくれている。


「で、昼寝じゃないなら、何をしていたの?」
「日焼けだ。」
「……日焼け?」


突拍子もない答えに、私はただただ面食らうばかりだった。
そんな私の目の前で、アイオリアは自分の両腕を交互に撫で擦っている。


「見てくれ、真っ白だろ。この春は寒かったから、トレーニング中もウェアを着込んでいる期間が長かったんだ。」
「それで、わざわざ日焼けを?」
「あぁ、こんな白い肌の色では格好悪い。」


確かに、彼の言う通り、その肌は白々としていた。
いつ見ても健康的に日焼けしている印象のアイオリアには、あまり似つかわしくない肌の色。
元々、アイオロスさんもアイオリアも小麦色の肌をしている訳じゃないらしい。
金茶色の髪に青や緑の瞳をした彼等は白人種に近いらしく、放っておくと直ぐに肌の色が白に戻るのだそうだ。
アイオリアは、それが許せないらしい。


「だからって、こんなところに転がって肌を焼く必要があるの? デスマスクさんやシュラさんだって色白じゃない。」
「イメージ的なものだ。ヤツ等なら多少、白くとも気にならないが、兄さんや俺が白いと凄く違和感があるだろう? 物凄く不健康に見える。」


最近、急激に気温が高くなってきたし、次の合同訓練の時にはウェアを脱がない訳にはいかないだろう。
まぁ、脱がないまでも、半袖には確実になる。
だから、それまでに『元の自分』に戻っておきたいらしい。
多くの後輩達が見ている手前、真っ白な肌をした弱々しい自分を晒したくないと、アイオリアは笑って言った。


貴方の肌が白いなんて事、私知らなかったよ、恋人なのに。
そう言いそうになって、口を噤む。
固く固く引き結ぶように口を閉ざす。
折角、話題を変えたのに、またそんな事を言ってアイオリアを困らせるのは本意ではないもの。
私は一抹の寂しさを胸に、言葉をグッと飲み込んだ。





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