「お・も・い! これ全部、筋肉だなんて、どういう身体の作りしてるの? 信じられないわ。」
「そりゃあ、聖闘士だからな。」


浮かべていた爽やかな笑みを、スッと苦笑に変えて、目を細めて私を見上げているアイオリア。
こうして見ていると、目を見張る程に彼に似ていると、時々、強く思わせられる。


「そういう爽やかな笑顔は、似てるわよね。」
「兄さんに、か? そりゃ、兄弟だから似てて当たり前だろう。」
「そうだけど……。でも、もっと似てても良いんだけどな。」
「もっと?」


そう、体格や笑顔だけでなく、ふとした瞬間に醸し出す雰囲気とか、柔らかでいて情熱的な視線とか、そんなところも少しは似てても良いのに。
アイオロスさんのような絶妙な仕草で、もっともっと私の心を掻き乱してくれたって良いのに。


アイオリアはそう、いつまで経っても爽やかさと真面目さばかりが立っているというか。
ただ男らしくて格好良いというだけでは、ねぇ。


「例えば、どんなところがだ?」
「こう滲み出るような男らしい色気とか、艶のある表情とか。そこが男性としてのアイオリアに足りない部分よね。」
「そうだな……。あと五年もすれば、俺にも兄さんくらいの色気、出てくるんじゃないか?」
「出てくるんじゃないか? じゃ駄目なのよ。あと五年も私を待たせる気?」


こんなとびきり素敵な肉体を晒して私の前に寝そべっているクセに、ちっとも色っぽい雰囲気にならないなんて。
沢山の光を浴びて輝くアイオリアの逞しい胸の中に、今直ぐにも抱き締められたいと思うのに、現実では、決してそうはならない。
アイオリアは優し過ぎて、そして、真面目過ぎる。
それは美点でもあり、欠点でもあり。
私にとっては、あまり嬉しくない長所だ。


アイオリアは何も言わないまま、苦笑いを深めて私を見上げているばかりだった。
口下手だからって、そうやって逃げるの?
いつもいつも、それではぐらかされている。


本当は、もっと追求だって出来る、アイオリアは言葉での遣り取りはあまり得意じゃないから。
でも、そうしないのは、彼を困らせるために傍にいる訳じゃないと、心の中で思い出してしまうから。
明日をも知れぬ戦いの中に身を置くアイオリアの支えになりたい。
だから、重荷にはなりたくない。


「で、アイオリアは何をしていたの?」
「何をしていたと思う? 当ててみてくれ、アリナー。」
「やっぱり、お昼寝?」


話題を変えたのは、これ以上、考えたくなかったからだった。
何も考えずにアイオリアと笑い合いたい。
今は、それくらいしか彼のために出来る事がなかった。





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