「ね、アイオリア。獅子座はどれ?」
「この時間には、もう見えないだろうな。」


西の空、海と夜空の境目をなくした暗闇を指差し、俺は肩を竦めた。
夕方近くの、もっと早い時間であれば、もしかすると見えたかもしれない。
だが、今はもう、あの黒い地平線の下へと沈んでいる頃だろう。


「そっか……。じゃあ、他に見える星座は? 教えて、アイオリア。」
「そうだな……。あれが琴座、あっちの十字が鷲座。で、そっちの十字形のが白鳥座だ。分かるか、アリナー?」
「うん、分かるよ。夏の大三角形ね。オルフェさんと、魔鈴さんと、氷河クンの星座。」


嬉しそうな声を上げて、素直に喜ぶキミ。
やはり獅子座を見せて上げられないのが、残念に思う。
きっと目を輝かせて眺めてくれるのだろう、強く深く俺の星座を。


「向こうに見えるのがペガサス座とアンドロメダ座。」
「星矢クンと、瞬クン。」
「あっちに北極星があるだろ? その下に見えるのが龍座だ。」
「紫龍クンの星座だね。」
「あの海に沈み掛けてるのが蛇使い座で、その横が射手座。」
「シャイナさんと、アイオロスさんね。山羊座は?」
「残念だが、暗く地味な星ばかりで、アリナーには分からないだろうな。」


苦笑しながら伝えれば、目をまん丸にして俺を見つめるキミ。
きっと黄金聖闘士の守護星座、黄道十二宮の星座は皆、明るい星ばかりだと思っていたのだろう。
そういえば昔、蟹座や山羊座・水瓶座が地味な星ばかりで形成されているのだと知った時、俺も酷くガッカリした記憶を思い出す。


「星座までシュラさんらしいのね。おかしいの。」


途端にクスクス笑い出し、再び砂浜に寝そべったキミは、星空に向かって手を伸ばした。
掴めそうで掴めない、あの星達。
俺も子供の頃に何度も同じ事をして、兄さんに笑われたっけ。
「リア、星に手は届かないよ。」と、そう言って。


「分かってるわ。でも、触れそうで触れない、この感じが良いの、何処かもどかしくて。やっぱり届かないから、より一層、素敵に見えるんだろうね。」
「そんなものなのか?」
「そうよ。アイオリアは、そう思わない?」
「そうだな、俺は……。」


一旦、言葉を切って、考える素振り。
本当は考えなどせずとも、答えは決まっているのだが。
あまりに即答は悪いだろうと、僅かばかりのキミへの配慮。





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