突然の事に驚いた彼の表情が、また可愛らしい。
私がクスッと笑うと、その声にハッとしたアイオリアが、お返しとばかりに私を引き寄せる。
後頭部に回した手で強く私を引き寄せ、逃れられないように固定して。
これでもかと言わんばかりに、濃厚で激しいキスの嵐。
上に居るはずなのに押し潰されてるみたいに苦しくて、私は降参の意を含めてアイオリアの胸を何度も叩いた。


「もうっ! 苦しいわよ、アイオリア!」
「アリナーが始めた事だろう?」


クイッと片眉を上げた、そんな顔は今まで一度も見た事がない。
どこか大人の慣れた仕草を思わせるそれは、私の心をドキッとさせるのに十分で。
自分の意思に反して赤く変わってしまう頬が、恨めしく思える。


「そうだけど……。でも、私のは気持ち程度のものだし。」
「軽かろうが重かろうが、俺の心に火を点けた事に変わりはない。」


そう言って、頭を押さえていた手を下へ下へと滑らすアイオリア。
その手は背中を伝い、更に下へと……。


「ちょっと、アイオリアッ?!」
「何だ、アリナー?」
「何しようとしてるのよ?!」
「言っただろう? 火が点いたって。」


何を訴えても止まらない手は、服の下へと滑り込み、直に背中を撫で上げる。
思いがけず肌に触れたアイオリアの手。
大きくてザラッとしてて、ちょっとガサツな……。


「アリナー。その……、今からしないか?」
「……何、を?」


アイオリアの無作法に肌を撫でる手を思えば、そんな質問なんて意味ないのに。
ついつい聞き返してしまう私。
だって、今はまだお昼過ぎ、真昼間も良いところだもの。


「何って……。デートの最後にするお楽しみの……。」
「まだ、こんなに明るいのに?!」
「俺の身体に火を点けたのは、アリナーじゃないか。責任くらい取ってくれても良いだろう?」


言われて少しは考える。
何もする事のない午後、二人きりで、時間の潰し方も見つからずに。
こんな時間なんて、そうそう訪れるものじゃない。
なら、アイオリアに流されるまま、喜びに耽る午後っていうのも悪くはないかもしれない。


「……分かった。しよっか、アイオリア。」
「は? い、良いのか?」
「何よ、その吃驚した顔は? 自分が言い出したんでしょ。」


目を見開いて私を見上げるアイオリアのおでこを軽く突っつけば、ハッとした彼の顔も可愛いと思う。
先程まで執拗に背中を彷徨っていた手も、今はピタリと止まっていた。





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