「んっ……、んんっ!」


俺の下で苦しそうに顔を歪めるキミに、俺は夢中で口付けた。
今、このひと時、俺以外の全てを忘れさせたくて。
キミの意識の全てを俺に向けていて欲しくて。


横暴だという事は分かっている。
こんな事を強要する自分は、己の都合だけキミに押し付けて、傲慢以外の何ものでもない。
それでも……。


「俺はキミがもし双子だったとしても、遠くからでも後ろ姿でも、アナベルを間違えないよ、絶対。なのに、キミは俺とアイオリアを間違えて抱き付いた。」
「そ、それはっ……。」
「俺がどれ程、悲しかったか。キミは知らなきゃいけないんだ、アナベル。しっかりと、俺という人間を覚えなきゃいけない。」


息も絶え絶えなキミが何とか反論しようとする声が、ヤケに扇情的に俺の耳に届く。
あの時、キミさえ俺を追って来なければ、闘技場をひっそりと抜け出した俺に気付かないでいてくれれば。
こんな事にはならなかったかもしれない。


でも、キミは追って来た。
頭を冷やそうとしていた俺を、無邪気な仕草で翻弄して、抑え込もうとしていた苛立ちを更に煽った。


だから、キミは知らなきゃいけないんだ。
俺だって、いつも穏やかに笑っていられる訳じゃないと。
怒りもすれば苛立ちもする、嫉妬もするし独占したくもなる。
泣かせてでも怯えさせてでも、今、キミが欲しい。
それくらいキミが好きだという事を。


「は、あっ……、んっ!」


再び深い深いキスを絡める。
背けようとする顔を、顎を捉えて逃さずに。
酸欠のためか、そこから生まれた心地良さのためか、先程まで抵抗を示していた腕に、グッタリと力が入らなくなった事を確認すると、俺は押さえ付けていた左手を離し、その手でキミの身体を性急に探り出した。


「あっ! やっ……!」
「良い反応だ、アナベル。」


ビクリと跳ね上がる身体は、この状況下で普段よりもずっと敏感になっているらしい。
何処に触れても感じてくれる。
それが嬉しくて、少しだけ心の苛立ちが治まった気がした。
が、今は大きく膨らみ始めた情欲に負け、この手を、この行為を止める事は出来そうにない。


「あまり大きな声を出すと、誰かが聞き止めるかもしれないけど、良いの? こんなところ、見られても?」
「っ?! や、やだぁ……。」
「なら、もっと良い子にしてなきゃな。」


ニコリと笑い掛けたら、キミは大きく目を見開いて息を飲んだ。
まだ、怖いのかな?
そうだろうな、俺にこんな一方的な事されたの、初めてなんだから。


だけど、キミに余裕を与えるつもりはない。
既に大部分が肌蹴ていた衣類を一気に剥ぎ取り、冷たく翳った草の上に、キミをうつ伏せに押し倒した。
驚いたキミは声を上げそうになり、だが、今の自分の姿を思い出してギュッと口を噤む。


「良い子だな、アナベルは。ご褒美に、いっぱい愛してあげるよ。」


滑らかなキミの背中に自分の胸を押し付けて、耳元に優しく囁く。
そして、俺は一気にキミの身体を奥深くまで奪った。





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